トヨタはなぜ「セダン」に力を入れるのか? 市場が縮小しても「クラウンセダン」は絶対必要!? 他社とは違う意外な事情とは!
トヨタがセダンに力を入れる理由とは?
クラウンクロスオーバーも、前述の通り、SUVでありながらボディの後部に独立したトランクスペースを備えるセダンです。クラウンシリーズの中では最初に発売され、セダンからSUVを中心としたバリエーション構成に変わる時の架け橋になりました。
仮にクラウンスポーツを最初に発売したら、従来型セダンとのギャップが激しかったと思いますが、セダンのクラウンクロスオーバーであれば違和感を抑えられます。クラウンクロスオーバーは、ハイヤーなどにも使われています。

以上のようにトヨタがクラウンを中心にセダンに力を入れる背景には、クラウンが2025年に生誕70周年を迎える伝統ある車種で、なおかつ法人営業が強いトヨタの事情もあります。
他社を見ると、今はスズキやダイハツだけでなく、大半のメーカーが軽自動車に力を入れています。2025年1~7月の国内新車販売では、日産車の39%、ホンダ車の44%、三菱車の58%が軽自動車でした。トヨタもダイハツ製の軽自動車を扱いますが2%以下です。
このようにトヨタは実質的に軽自動車を扱わないため、小型/普通車市場のシェアは50%を上まわり、小型/普通車販売ランキングの上位にもトヨタ車が並びます。この売り方を守るためにも、法人、官庁、自治体などのビジネス需要を確実に押さえられるクラウンセダンが重要なのです。
そしてセダンはSUVやミニバンに比べて天井が低く、後席とトランクスペースの間には、骨格や隔壁があります。この低重心で高剛性のボディは、走行安定性と併せて乗り心地にも優れた効果をもたらします。さらに後輪が居住空間から隔離されたトランクスペースの部分に位置するため、タイヤが路上を転がる時のノイズも遮断しやすいです。
高級車にとって大切な快適性と静粛性を向上させるためにも、セダンは利用価値の高いボディ形状です。そこでレクサスも、上級ブランドとあって3車種のセダンを残しています。
クラウンがセダンに力を入れる理由として、トヨタがその価値を生かせるメーカーであることも挙げられるのです。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

































































