コンセプトカーは、自動車メーカーが未来の技術やデザインの方向性を示すために製作されますが、過去を振り返ると、ブランドの未来そのものを予告する重要なモデルも存在します。

　2023年のモントレー・カー・ウィークでサプライズ公開されたアキュラ「Electric Vision Design Study（以下、エレクトリック・ビジョン）」は、まさにその代表例といえるでしょう。

　エレクトリック・ビジョンは、アキュラの次世代ハイパフォーマンス・スポーツEVデザインの方向性を示すコンセプトモデル。

　エクステリアは、従来のNSXが持つ角張った印象から一新。ル・マンのプロトタイプレーサーを想起させる、低くワイドで流麗な曲線が特徴です。巨大なガラスキャノピーがフロントフードまで回り込み、未来感の強いスタイリングを演出しています。

　最も印象的なのが、ネオングリーンに発光するライティングです。フロントのライトバーは“チェシャ猫の笑み”を思わせ、各所に配置されたネオングリーンの光が、このクルマが電動パフォーマンスカーであることを強烈に印象づけます。

　インテリアは未公開ですが、過去のアキュラEVコンセプトから推測するに、走行モードに応じてコックピットの雰囲気や機能が変化する先進的な空間となるかもしれません。

　生産終了した2代目NSXタイプSが600馬力だったことを踏まえると、次期電動NSXは1000馬力に達することもあるかもしれません。

　エレクトリック・ビジョンについて公開されたのはデザインの一部だけですが、ホンダは過去2022年4月12日に「四輪電動ビジネスの取り組みについて」で、スポーツモデルに関する発表をしていました。

　この中では、各市場におけるEV展開について、現在から2020年代後半までに主要地域ごとの市場特性に合わせた商品を投入すると明かしており、2030年までには、軽商用からフラッグシップクラスまで、グローバルで30車種を展開し年間生産は200万台を超える計画を発表していました。

　また、スポーツモデルに関しては、「スペシャリティ」と「フラッグシップ」というふたつのスポーツモデルをグローバルへ投入していくことを名言しており、同モデルの黒いカバーがかけられたティザー画像が公開されていました。

　うちスペシャリティについては、のちに「プレリュードコンセプト」として登場し、2025年中には市販化も予定されています。

　一方で、当時フラッグシップのスタイリングから、「次期型NSXなのでは」と話題になりましたが、その後登場したAcura Electric Vision Design Studyもその流麗な形状と共通する部分があります。

　そんな影響もあってか、Acura Electric Vision Design Studyが“次期型NSX”かもしれないという期待の声も多く上がっており、今後の展開に注目が集まっています。

　しかし2年近くたった現在も続報はなく、完全なデザインすら公開されていません。2025年10月には、日本で「ジャパンモビリティショー」が行われます。もしかしたらこの場で進展の発表があるかもしれません。期待して待ちましょう。