1リッターで30km走れる!? ホンダ「フィット」同じエンジン搭載するのになぜグレード違いで“燃費”が変わる? 「低燃費なクルマ」の意外な条件とは?

同じパワーユニットを搭載するのに、グレードや車種に応じて燃費が大きく変わることがあります。一体どういう事情があるのでしょうか。

同じエンジン搭載するのに…なぜグレード違いで“燃費”が変わる?

 最近は政府が補助金を拠出して、ガソリン価格の高騰を抑えています。一時に比べて価格は落ち着きましたが、それでも2025年6月上旬におけるレギュラーガソリンの全国平均価格は、1リッター当たり約172円。

 2020年6月上旬は約128円だったので、5年前に比べると1リッター当たり44円値上げされ、比率に換算すれば1.3倍以上高くなっています。

「フィット」はグレードによって燃費が違う!?
「フィット」はグレードによって燃費が違う!?

 2021年10月以降、レギュラーガソリンの全国平均価格は、ほぼ一貫して1リッター当たり160円以上です。この状況を考えると、今後、短期間でレギュラーガソリン価格が以前の120~130円まで戻るとは考えにくく、クルマを選ぶ時に、燃費性能を重視する人も増えているでしょう。

 そこでウェブサイトで各車種のWLTCモード燃費をチェックすると、意外なことに気付きます。同じ車種でも、グレードによって燃費数値がけっこう異なるからです。

 例えばホンダ「フィット」のハイブリッド車(e:HEV)の2WDの場合、「e:HEVベーシック」のWLTCモード燃費は30.2km/Lです。それが、「e:HEVホーム」は29km/Lに下がり、スポーティな「e:HEV RS」は27.2km/L、SUV風の「e:HEVクロスター」は27.1km/Lです。

 カタログ燃費の数値上で計算すると、e:HEVクロスターの燃料代は、e:HEVベーシックに比べて10%以上増えるという具合です。

 このようにグレードに応じて燃費数値が変化する背景には、複数の理由があります。

 まずは車両重量です。燃費性能に優れたフィットe:HEVベーシックは1190kgですが、e:HEVクロスターは1210kgに増えます。全幅×全高は、e:HEVベーシックは1695mm×1515mmですが、e:HEVクロスターは1725mm×1570mmですから、後者は空気抵抗も増加します。

 タイヤサイズは、e:HEVベーシックは185/60R15で、転がり抵抗の少ないタイプを装着。指定空気圧は、燃費を節約するために、前輪が240kPaで後輪も230kPaと高めです。

 一方、e:HEVクロスターのタイヤサイズは185/60R16で、乗り心地にも配慮したタイプを履いています。指定空気圧は前輪が220kPa、後輪は210kPaに抑えて、乗り心地にも配慮しました。

 このように同じフィットでも、e:HEVベーシックとe:HEVクロスターでは車両の造りに細かな違いがあり、燃費数値の違いに結び付いています。

 また燃費を計測する時は、クルマの重量に応じて、走行抵抗に相当する等価慣性重量を加えます。

 e:HEVベーシックの車両重量は1190kgですから、等価慣性重量の区分は、1081~1195kgの範囲にギリギリで入ります。これは燃費計測で有利になります。

 e:HEVクロスターの車両重量は1210kgですから、等価慣性重量は1196~1310kgの区分です。e:HEVベーシックと違って上限ギリギリではなく、この等価慣性重量も、燃費数値の違いに影響を与えています。

 このほか駆動方式の違いもWLTCモード燃費に影響を与えます。e:HEVベーシックのWLTCモード燃費は2WDでは30.2km/Lですが、4WDになると25.4km/Lに悪化します。燃費数値上は、4WDでは燃料代が19%増えますが、ここにも先に挙げた等価慣性重量が関係します。

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