1リッターで30km走れる!? ホンダ「フィット」同じエンジン搭載するのになぜグレード違いで“燃費”が変わる? 「低燃費なクルマ」の意外な条件とは?
同じエンジンを搭載する「ヤリス」と「アクア」の違いとは?
同じパワーユニットでも、車種が変わると、燃費数値には一層の開きが生じます。
1.5リッター直列3気筒ハイブリッドを搭載するトヨタ「ヤリスハイブリッド X・2WD」は、WLTCモード燃費が36km/Lに達します。この燃費数値は、日本で購入可能な4輪車では最も優れています。
一方、ハイブリッド専用車のトヨタ「アクア G・2WD」は、WLTCモード燃費が33.6km/Lで、ヤリスハイブリッドXを2.4km/L下まわり、アクアGは燃料代が7%増えます。

両車は基本的に同じハイブリッドシステムを使っていますが、駆動用電池は異なり、ヤリスはリチウムイオン電池ですが、アクアはバイポーラ型ニッケル水素電池です。
アクアのバイポーラ型ニッケル水素は、電池のサイズを変えずに出力を向上できることがメリット。エンジンとモーターの相乗効果によるシステム最高出力は、ヤリス、アクアともに116馬力ですが、実際の運転感覚で比較するとアクアのほうが体感的に力強い印象です。
また両車ともに5ナンバー車ですが、ヤリスハイブリッドXは全長が3950mm、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は2550mmで、車両重量は1050kgです。
アクアGは全長が4050mm、ホイールベースは2600mmで車両重量は1130kgに増えます。アクアはボディが少し大きく車両重量も80kg重くなり、これも燃費数値に影響を与えました。
このほかタイヤも異なります。ヤリスハイブリッドXはタイヤサイズが175/70R14の転がり抵抗を抑えたタイプで、指定空気圧は前輪が250kPa、後輪は240kPaと高いです。タイヤの転がり抵抗を徹底的に抑えて、燃費性能の向上に重点を置きました。
アクアGはタイヤサイズが185/65R15で、ヤリスハイブリッドXよりも少し太く、走行安定性にも配慮しています。指定空気圧は前輪が220kPa、後輪は200kPaですから、ヤリスハイブリッドよりも低く設定されて乗り心地も快適です。
アクアは前述の通りヤリスハイブリッドXに比べて燃料代が約7%増えますが、走行安定性や乗り心地にメリットが生じます。
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以上のように、燃費を向上させると欠点が生じる場合もあります。フィットe:HEVのように、ひとつの車種にグレードが豊富に用意されている場合、タイヤサイズなどが異なる複数の仕様を試乗すると良いでしょう。
燃料消費量が10%増えても、それ以上に乗り心地が快適になる場合もあるからです。
ヤリスハイブリッドとアクアにも、同様のことが当てはまります。両車を乗り比べて判断しましょう。
そして転がり抵抗を抑えた低燃費指向のタイヤを履いている場合、日常的に最も気になる欠点が乗り心地です。
販売店の試乗車で、路面の荒れた場所を時速25~40kmの低速で走っている時に、乗り心地の違いが分かりやすいです。購入する時は試してみることをおすすめします。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。



























