日産の「ステーションワゴン“SUV”」! 3.5リッター「V6」搭載の“スカイラインワゴン”!? 高性能「電動スーパーHICAS」も搭載した「ステージア AR-X FOUR」とは
日産が2001年に送り出した「ステージア AR-X FOUR」は、ステーションワゴンとSUVを融合させたクロスオーバーモデルとして登場しました。いったいどのようなクルマだったのでしょうか。
スカイライン譲りの走りとSUVの機能を融合したプレミアムクロスオーバー
過去を振り返ると、時代を先取りしていた“隠れた名車”が存在することがあります。日産「ステージア AR-X FOUR」は、まさにそのひとつといえる存在です。

2001年10月、日産は従来のステーションワゴンとは一線を画す新型モデル「M35型ステージア」を発表し、その最上級グレードとして「AR-X FOUR」を同時にラインナップしました。
プラットフォームにはV35型スカイラインと共通のFM(フロントミッドシップ)プラットフォームを採用し、優れた走行性能と上質な乗り心地を実現。これをベースに、SUVの力強さや最低地上高の引き上げといったオフロード性能を融合させたのがAR-X FOURです。
AR-Xの車名は“All-Road X-over”に由来し、都市と自然の両シーンに対応するクロスオーバービークルを志向していました。
標準車比で最低地上高は40mm高い180mm、全長4800mm×全幅1790mm×全高1550mmに設定され、18インチホイールとオールシーズンタイヤの組み合わせや、オーバーフェンダーがもたらすスタンスも相まって、重厚感あるフォルムに仕上げられていました。
駆動方式には日産独自の電子制御4WDシステム「ATTESA E-TS」を採用。さらに、後輪にはビスカスLSDを組み合わせることで、オンロードでの走行安定性と雪道などでのトラクションを両立していました。
特に前期型に搭載されたVQ25DET型2.5リッターV6ターボエンジンは、最高出力280PS、最大トルク407N・mを発生。後期型(2004年8月マイナーチェンジ)にはVQ35DE型3.5リッターNAエンジン(最高出力272PS、最大トルク353N・m)が搭載され、いずれも5速ATとの組み合わせにより、優れた動力性能と静粛性を兼ね備えていました。
シャシー面でも、前後ともにマルチリンク式サスペンションを採用し、車高アップに合わせて専用チューニングが施されていました。また、高速走行時の操縦安定性を向上させる「電動スーパーHICAS」も搭載されており、プレミアムクロスオーバーとしての素性の良さをさらに高めていました。
FMプラットフォームとマルチリンクサスペンションの組み合わせは、AR-X FOURに一般的なSUVにはない高いオンロード性能をもたらしました。
しかし、車高アップや大径タイヤ装着といったクロスオーバー化に伴うトレードオフとして、最小回転半径の増大(5.8m)など、都市部での取り回しには若干のネガティブな側面も見られました。
インテリアは、タン色本革と人工皮革“サプラーレ”による2トーンシートや、後期型におけるアルミ加飾、ファインビジョンメーターなど、最上級グレードにふさわしい質感を備えていました。プラズマクラスター付きエアコンやBOSEサウンドシステム、DVDナビゲーションなどの豪華装備も設定され、後席を倒せば荷室も広く、実用性にも優れたモデルでした。
車両価格は、前期型が356万円から、後期最終型特別仕様車「スタイリッシュシルバーレザー」が389万円で販売されていました。
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AR-X FOURは、M35型ステージアの中でも特に異色の存在として、2001年から2007年半ば頃まで販売されました。
クロスオーバー市場がまだ成熟していなかった時代背景もあり、販売台数は限定的でしたが、今あらためて振り返ると、スカイラインの走行性能とSUVの多用途性を兼ね備えた、異色かつ先駆的なモデルだったことは間違いありません。
日産「ステージア AR-X FOUR」は、SUVの力強さとワゴンの実用性、そしてスポーティな走行性能という異なる要素を高次元で融合させた“隠れた名車”でした。近年は希少性と独自性から再評価の機運も高まっており、自動車史のなかで忘れられない一台として、強い存在感を放ち続けています。
Writer: 佐藤 亨
自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。













































