トヨタ「ランドクルーザー」&“ハイラックスサーフ後継機”の「4ランナー」何が違う? サイズ感もキャラクターも似てる米国の「本格SUV」それぞれどんな人が買っているのか

アメリカでは「ランドクルーザー(日本名:ランドクルーザー250)」とプラットフォームを共有する「4ランナー」が展開されていますが、サイズ感もキャラクターも近しい2モデルの顧客層はどのような違いがあるのでしょうか。

サイズもプラットフォームも一緒だけど…「ランクル」VS「4ランナー」どっちに乗る

 アメリカでは2023年夏に「ランドクルーザー(日本名:ランドクルーザー250)」が2024モデルとして発売されました。

 それに続いて2024年春にはプラットフォームを共有する「4ランナー」が2025モデルとして発表されており、11月のLAオートショーで大々的にお披露目されました。なお、ランドクルーザー、新型4ランナーともに日本国内のトヨタ工場で生産されアメリカへ輸出されています。

プラットフォームもキャラクターも同じような2台だが…?
プラットフォームもキャラクターも同じような2台だが…?

 4ランナーとランドクルーザー(ランクル)はいずれもアメリカでとても人気のあるモデルですが、いずれも歴史的背景はとてもユニークです。

 まず、4ランナーは米国トヨタがFJ40型ランドクルーザーの販売をやめた後にその歴史が始まります。

 始まりは、ウィスコンシン州の個人ディーラーの発案からでした。ピックアップトラック「ハイラックス」の荷台を改造したモデルを、キャンピングカーメーカーのウィネベーゴ社に持ち込みます。

 それはハイラックスをベースに、ウォークスルーキャビンと一体型ファイバーグラスシェルを備えた理想のSUVの姿でした。

 すぐに注目を集め、米国トヨタとウィネベーゴは契約を結び、1981年に「トヨタ トレッカー」の名前で発売されました。

 そのコンセプトを引き継いだ初代「ハイラックスサーフ」が日本では1983年に発売され、瞬く間に人気となり、当時のRVブームをけん引した1台となったのです。このとき米国名は、トレッカーから「4ランナー」に変更されています。

 なお「RV」本来の意味はキャンピングカーを差すものですが、この時代の日本におけるRVとは、現代でいうSUVやステーションワゴン、ミニバンなど「レジャー」に適したクルマを総称していました。

その後のSUVブームの先駆けとして、ハイラックスサーフはライバルの日産「テラノ」と共に人気を集めています。

 ハイラックスサーフは4代目まで日本で販売されましたが、5代目以降は海外専売車種の4ランナーとして北米で販売を継続。そして今年春に発表された新型4ランナーが6代目となります。

 いっぽう、ランドクルーザーは4ランナーよりもはるかに長い歴史を持っています。

 アメリカで最初に発売されたのは1958年。その扱いやすさ、耐久性、整備性の良さでアメリカでも大変な高評価を獲得しました。ランドクルーザーこそ、アメリカでのトヨタ車、日本車の成功に大きく貢献した歴史的な1台だったのです。

 アメリカでは60年以上にわたって販売されてきたランドクルーザーでしたが、2021年にランドクルーザー200系が販売を終了し、後継のランドクルーザー300系がアメリカで販売されないことがわかると、北米のランクルファンは大きく落胆しました。

 しかしその後、2023年夏にランドクルーザー250の米国販売が明らかになり、多くのランクルファンが熱狂しました。

 ちなみに日本ではプラドの後継としてランドクルーザー250という名称で販売されていますが、アメリカでは250の名前は使わず、標準モデルの「ランドクルーザー」と、丸目でレトロチックなグリルが特徴の「ランドクルーザー1958」の2グレードが基本構成となります。

 1958とはアメリカでランドクルーザーが発売された年であることを意味しています。

「いつかはランクル!」 アメリカでも憧れのSUV

 ランクルと4ランナーはアメリカでどのようなオーナーに愛されてきたのでしょうか。

事情に詳しい、「TORC(Toyota Owner’s and Restorer’s Club)」のトップを務めるお二人に聞いてみました。

 TORCは1995年に初回が開催された全米最大のトヨタオーナーが集まる「トヨタフェスト」の主催団体としてもおなじみです。

 TORC主宰、テリー山口氏は以下のように語ります。

「4ランナーとランクル。どちらも人気がありますが、TORCメンバーの中では『顔がスポーティだから4ランナーの方が好き。だけど、高級車志向ならランクル』という意見が多かったです。

 多分気兼ねなく毎日乗るなら4ランナーなのでしょうね。

 オーナー像はモデルと乗り方によってずいぶん変わってくるでしょう。新しいモデルなのか、イジる乗り方(旧車を好む層)なのか、またふだんのアシとして乗るか、オーバーランドを楽しむ相棒として乗るかによっても変わりますね。

 ランクルのオーナーさんたちはやっぱりプライドというか、歴史や価格含めてトヨタの中で最高のSUVに乗る、歴史のある車に乗るので皆さん、誇りを持って乗られています。

 やはりいじれる系、古い車両(すごく古いものから、2000年前半くらいまで)のランクルに関しては「大人」じゃないと手を出せない所があるように感じます。

 自分もそうでしたが、ある程度落ち着いた年齢にならないと、ランクルはボディも基本のスタートも高額ですし、パーツその他もいじろうとしたら全てが結構、値段も扱い方もハイレベルになっていきますから。

 オーバーランド、アウトドア仕様でいじりやすいのは4ランナーでしょう。まだランクルに手を出せない若者にとっては4ランナーを卒業したらランクルに行く!という人も多いと感じます」

TORCディレクターMike Bingham氏は以下のように語ります。

「基本、現行のランクル(250)は生産台数が少なくさらに日本からの輸入ということもあって、ディーラーに入ってくる数も少ないのです。

 普段の在庫もないので欲しい人は長い間待つことになります。そして価格は5万6450ドル(約888万円)からのスタートですから、やはり購入する年齢層は高めです。

 その上でランクルのファンの流れがありますね。4ランナーは2024年春に2025モデルとしての新型が発表されました。アメリカでも間もなくデリバリーが始まるでしょう。

 4ランナーは2025からは全く新しいモデルになります。タコマ、4ランナー、そして250と同じシャシーをシェアするわけですが、これがオーバーランダー(本格的なクロカン4×4)が欲しい人達にとっては非常に重要になります。

 一般車両のシャシーにボディが載るSUVとは全く違った乗り物になります。

 4ランナーとランクルは価格でいうと、1.6万ドル(約240万円)もの違いがあります。販売台数も5~10倍違ってきます。

 だから若い人たちは4ランナーに行くでしょうね。ランドクルーザーの少しレトロなスタイルが気に入っていて、納車まで待つ覚悟があり価格が高くても構わないのであれば、ランドクルーザーは素晴らしい選択になるでしょう。

 より現代的なスタイルでよりお得な価格で欲しいならば4ランナーが良いでしょうね」

 当初予定していた2024年夏の発売から4か月の遅れとなりましたが、新型4ランナーがいよいよアメリカで発売となります。6代目4ランナーも大ヒットとなりそうです。

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Writer: 加藤久美子

山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。

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