なぜ「SUV風ハイトワゴン」人気になった? たった“6年”で「超売れ筋」へと変化… 「N-BOX」「タント」までも設定 「アウトドア仕立て」支持される理由とは
三菱の「デリカミニ」にはじまり、スズキ「スペーシアギア」やホンダ「N-BOX JOY」が立て続けに登場。こうしたSUV風の軽ワゴンが好調です。一体なぜ人気なのでしょうか。
なぜ「SUVっぽい軽ワゴン」人気出た?
スズキ「スペーシアギア」にダイハツ「タントファンクロス」、三菱「デリカミニ」、そしてホンダ「N-BOX Joy」。クルマに詳しい人ならきっと、それらに共通するポイントがすぐに理解できるでしょう。
そう、共通するのは「SUV風のスタイルとした軽自動車スーパーハイトワゴン」だということ。上記のモデルはすべて、軽自動車スーパーハイトワゴンの派生モデルとして、“SUV風”のスタイリングを身に着けているのが特徴です。
このジャンルのパイオニアとなる「スペーシア」の派生モデルとして、初代スペーシアギアが登場したのが2018年末。
そこから約6年で多くのフォロワーが登場しました。なぜそこまで広がったかといえば、人気があるからに他ならないでしょう。
では、なぜSUV風のスーパーハイトワゴンが人気なのでしょう。
その理由は3つあります。しかし、その3つの理由が単独で備わるだけだったのなら、ここまで人気が盛り上がることはなかったのです。その3つの理由の相乗効果で市場が拡大したと考えられます。
ひとつは、いまの新車市場でSUVが「流行っている」から。
ヒトは他人と同じものを選ぶことに安心感を覚えます。何かが流行っていれば、その流行に乗ることで安心。だからSUVが流行っていれば、SUVを買うこと、もしくはSUV風のクルマを買うことで安心感が得られるというわけです。
ふたつめは、実用性が高いから。
SUVのようなクルマが欲しいのに、直球のSUVではなく“SUV風”のクルマを買う理由。それは本筋のSUVでは何かが足りないからでしょう。
それが「実用性」です。車体が小さくて運転しやすいうえに、後席が広くて、スライドドアだから後席の乗り降りがしやすく子育てファミリーでも安心。
これは軽自動車スーパーハイトワゴンの大きな特徴であり、とても実用性の高いパッケージングです。当然ながら、本家SUVはそれらを持っていません。
だから日常生活の道具として優れた“SUV風軽スーパーハイトワゴン”なら高い実用性があり、選ばれるのです。
そしてもうひとつ、SUV風軽スーパーハイトワゴンには「遊び心」があるということ。
ノーマルタイプは普通過ぎるし、カスタム仕様もありきたりで「スポーティ&上質」という古い価値観。どちらにもキャラクターとしての目新しさはありません。
しかしSUV風軽スーパーハイトワゴンは(三菱「eKアクティブ」などの稀な例はあったものの)わずか6年ほどの歴史しかない新しい価値観だし、なにより所有するだけで毎日が楽しくなりそうな雰囲気。そんな雰囲気が多くの人に受け入れられたのです。
なにも、SUV風のモデルだからといってアウトドアに出かける必要なんてありません。
ガレージに収まるのが普通のスーパーハイトワゴンやカスタム仕様ではなく、SUV風というだけで、ワクワクできるような気がするのです。これはオフロードを走るわけでもないのにスズキ「ジムニー」を選ぶ人とも同じ感覚でしょう。
上記3つのポイントは、いわば「3本の矢」。
それぞれ単独でもクルマの魅力になりえますが、3つが束となることでより訴求力を強め、そして高い人気につながるのです。
先駆者であるスペーシアギアは2024年9月に、初のフルモデルチェンジを迎えて2代目へと進化しました。
正直なところ筆者(工藤貴宏)は、はじめてスペーシアギアを知ったときに「スズキも無茶するなあ。スーパーハイトワゴンをアウトドア仕立てにするなんて」と思いました。
しかし、そんな筆者の(余計な)心配をよそに、このジャンルはみるみる拡大。スズキのマーケティングは正しかったようです。
そして今の筆者はこう思うのです。「スズキはうまいことやったな」と……。
Writer: 工藤貴宏
1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。
あ
スペーシアギアはウェイクの二番煎じ感が凄いのですが、軽SUVについて何故こうもスズキが持ち上げられるのでしょうか?評価されるべきはモーターショーで“デカデカ”を展示し、ウェイクを販売したダイハツの開発陣だと思うのですが?