国民に新たな「交通税」の導入か!? クルマに”乗らない人”も対象? 近い将来に起こり得る「交通のあり方」とは

2024年10月2日に日本自動車工業会が示した「自動車税制抜本見直しの改革案」で「新たな税金が生まれるかもしれい」という可能性が見え隠れしています。どういうことなのでしょうか。

2030年代、クルマに乗らない人も負担する「交通税」の導入はあるのか?

 いまから5年ほど先、2030年代になると移動や交通に対する新たな税金が生まれるかもしれません。
 
 日本自動車工業会(自工会)が10月2日に示した、「自動車税制抜本見直しの改革案」でその可能性が見え隠れしています。

え? 新たな税金が出来るかも? 言うなれば「交通税」とは?
え? 新たな税金が出来るかも? 言うなれば「交通税」とは?

 今回の改革案は、短・中期的な改革と、長期的な改革について示しています。

 短・中期とは、2026年以降を指します。

 具体的には、取得時に現在の性能環境割を廃止し、消費税に1本化。

 そして、所有時は、現在の自動車税(軽自動車税)と自動車重量税を1本化するカタチを目指すとしています。

 車重によって税率が変わり、さらにEVやプラグインハイブリッド車などCO2削減に効果によってその税率が増減する仕組みを検討するというのです。

 ここまででも、自動車税制としてはかなり思い切った改革なのですが、その先となる2030年代を見据えた長期的改革の中身がかなり大きな改革という印象を持ちました。

 ここでは、個人や企業がクルマを所得したり、または保有という概念をさらに広げて、

「モビリティ」という枠組みでの走行や利用に対する税金を考えていく、というのです。

 「自動車所有者以外も受益に応じて公平に負担する課税のあり方」を議論するといいます。

 つまり、人々が自由に、かつ便利に移動できる社会をつくるために課税するということ。

 言うなれば、「交通税」ではないでしょうか。

 なぜ、このような発想が自工会から出てきたのでしょうか。

 その背景を考えてみます。

 時系列でみると、2024年12月の与党・税制調査会で「税制大綱」がまとまった段階で、

 2026年までに自動車税制の抜本改革に向けた本格的な議論を始めることが盛り込まれました。

 ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車など、電動化が進む中でパワートレインによる公平な税制を考えることが重要視されたからです。

 また、現在の自動車税制は高度成長期に自家用車や商用車の普及が一気に進んだことを受けて、道路インフラを整備することを主な目的としていたものが、その後に一般財源化されるなど、修正が重ねられて現在のかたちに落ち着いている状況です。

 さらに、国内自動車市場が1990年をピークに需要が段階的に落ちてきており、税収の減少につながっています。

 税収の減少は、パワートレインの電動化の普及によってガソリン税にも及んできています。

 このように、クルマに直結する社会変化を見ただけでも、自動車税制の抜本改革の必要性をイメージしやすいと思います。

 一方で、いま大きな社会課題になっているのが、地域交通の再編(リ・デザイン)です。

 路線バスやコミュニティバスが事業としての採算が合わないために大幅減便するケースが、地方部だけではなく都市部でも目立つようになってきました。

 また、高齢者が運転免許を自主返納した後の移動方法として、定額タクシー制度などを準備する自治体もありますが、自治体の財政負担は少なくありません。

 直近では、「自家用車活用事業」、または「自家用有償旅客運送」によるライドシェアを導入する地域も徐々に増えてきているものの、地域によってはドライバーが十分集まらないケースも見受けられます。

 高度成長期以降、日本では人口増加と地域経済の拡大によって地域交通の規模が拡大してきました。

 それが、人口減少や自家用車依存生活の定着、さらに最近ではコロナ禍によるライフスタイルの変化などによって地域交通の利用者数の減少が顕著になっています。

 これまで、民間交通事業者によるバスやタクシーの運営が事業として成り立たないのであれば、都道府県や市町村が事実上、民間交通事業者に対して赤字補填をしながら地域交通をなんとか維持してきました。

 しかし、交通で大きな課題がある地域ほど、財政面で厳しい状況にある自治体が少なくありません。

 そうした自治体の中には「地域の交通全体に対する税のあり方」を議論するべきではないかという声が出ていました。

 このような地域社会からの声と、電動化や自動運転など新しい技術革新を進める自工会との考えが、同じ方向に向き始めていると言えるのではないでしょうか。
 
 そうとはいえ、地域交通を使わない人まで一律、税金またはそれに相当するような金銭的な負担を求めることについては、反対する人もいるでしょう。

 また、2026年以降に実施を目指す、短・中期的な自動車税制の変革によって、二重課税が解消されるなどで仮にユーザーの税負担が軽減されたとしても、2030年代以降に交通税が導入されれば、ユーザーにとって実質的な増税になりかねません。

 いずれにしても、日本はいま、地域交通の再編(リ・デザイン)が待ったなしの状況にあることは間違いありません。

 国民1人ひとりが、社会全体における交通のあり方について真剣に考えるべきだと思います。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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