「ちょっとッ!何してるの!」 私有地での「無断駐車」どうする? 勝手に移動は逆効果? 聞き慣れない「自力救済禁止の原則」とは何なのか
放置車両を発見したら…どうする? 何ができる?
私有地に放置車両がある場合、まず車両の写真撮影と、いつから駐車されているかなどの記録を残した上で警察に相談しましょう。
私有地である以上、基本的には警察が放置車両の移動はできないものの、その車両が盗難車や何らかの犯罪に使われたものであれば警察が証拠品として引き上げることがあります。
次に盗難車などに該当しなかった場合は、土地の管理者が放置車両の所有者を特定しなければいけません。
具体的には放置車両が登録自動車ならば最寄りの運輸支局に、軽自動車ならば軽自動車検査協会に車両の照会を依頼して、所有者を明らかにします。
たとえば放置車両が登録自動車のとき、運輸支局で「登録事項等証明書」の交付請求をおこないます。
この請求に際しては車両が放置されている場所や放置期間といった情報のほか、放置車両の写真が必要となるため事前に準備しておくことが大切です。
さらに照会によって放置車両の所有者が判明すれば、所有者の住所あてに「車両の撤去」や「損害賠償金の支払い」などを求める内容証明郵便を送ります。
これに対して所有者が応答しない場合や撤去を拒否した場合などは、車両の撤去と土地の明け渡しを求める訴訟を起こす必要があります。

そして訴訟で土地の明け渡しが認められてようやく、車両の処分やレッカー移動といった強制執行の手続きができるようになります。
放置車両に価値があれば競売にかけて売却代金を受け取ることもできますが、撤去に際しては車両の開錠費用や運搬費用、人件費などがかかるため、費用面でマイナスとなる可能性が高いと考えられます。
実際のところ車両の所有者と連絡がつかず、裁判所の許可を受けてはじめて撤去が可能となる事例も多く、土地の管理者にとって非常に労力がかかる手続きといえるでしょう。
※ ※ ※
現在の法律では残念ながら、長期間の放置駐車をされると土地の管理者にとって「やられ損」となってしまいます。
土地の管理者が駐車場に防犯カメラやゲートを設置するなど予防策を講じることも重要です。
しかし、何より放置駐車の厳罰化や車両撤去手続きの簡略化など根本的な仕組みの改善が求められます。
Writer: 元警察官はる
2022年4月からウェブライターとして活動を開始。元警察官の経歴を活かし、ニュースで話題となっている交通事件や交通違反、運転免許制度に関する解説など、法律・安全分野の記事を中心に執筆しています。難しい法律や制度をやさしく伝え、読者にとって分かりやすい記事の執筆を心がけています。



















