軽トラックは維持費が安く、取り回しのよいサイズに大容量の荷台を備えることで、商用ニーズだけでなく、アウトドアレジャーなどを楽しむ一般ユーザーにも支持されています。
　
　しかし、そんな軽トラックの荷台を「後ろに伸ばす」ことで、停車中に荷室を有効活用できるクルマがあるのです。

　それがダイハツの「ハイゼットトラック ジャンボ エクステンド」です。

　2023年1月開催のカスタムカーイベント「東京オートサロン2023」で披露されたコンセプトカーで、軽トラック「ハイゼット トラック」のうち、キャビン部が延長された「ジャンボ」仕様車をベースとしています。

　最大の特徴は荷台で、後部に向かってスライドするキャノピーが取り付けられており、荷台部の空間を拡張することができます。

　エクステリアでは、キャノピーがハイゼット トラックのキャビン部と連続した形状になっていることで、軽トラックというよりも軽バンのような出で立ちをしています。

　室内はハイゼット ジャンボの標準荷室長1500mmから1100mm延長され、最大2600mmを確保したほか、フロアをフラットにするためのマットが敷かれており、荷台の拡張に合わせた形状のマットが配され、横になることも可能です。

　実際には車中泊を想定したものではなく、スポーティな装いとすることで、モータースポーツの作戦会議などの拠点となる「モーターホーム」のイメージとしていましたが、公開時は多くの車中泊ユーザーに注目され、その登場に期待が高まっていました。

　そして2023年11月、FIA世界ラリー選手権（WRC）最終戦「ラリージャパン」会場の豊田スタジアム（愛知県豊田市）内で、ダイハツ車のカスタムブランドであるD-SPORTは「ハイゼット ジャンボ エクステンド」を展示しました。

　東京オートサロン2023で披露されたハイゼットトラック ジャンボ エクステンドと似ていますが、造りは少し異なり、屋根やサイドパネル、テールゲートなど外側のみが「筒」のように伸びて、内部が露出するような形になっています。

　伸びしろは1200mmでコンセプトカーと同一。テールゲートにはカーテンが装備され、屋根が伸びた状態で3面全てを下ろすと幕を下ろしたタープテントのように、完全なプライベート空間を確保できます。

　さらに、東京オートサロン2023では公道を走行できないコンセプトカーでしたが、このハイゼット ジャンボ エクステンドはナンバーを装着し、自走が可能。ラリージャパン会場まで自走で来たといいます。

　ラリージャパン会場内での取材に対し、ダイハツ デザイン部の芝垣 登志男氏は当時以下のように話しています。

「最初はコンセプトカーと同じくトランポ（運搬専用車）にするつもりでしたが、ラリーをやっている方に話を聞くと、（現地では）着替えなどをするプライベート空間がないということを知り、それを解決するためにこうしたものを製作しました。

　実際に使ってみると、昨日（ラリージャパン開催初日）は風も強かったのでとても便利で作ってよかったなと思います。

　テントのように使えるので、着替えだけではなくて、さっきもこの中でご飯を食べたんですが、キャンプとかほかの使い道も結構あるなと感じました」

　なお、実車はこの1台のみで発売未定としながらも、「販売してほしいという声があればもしかしたら実現するかもしれません」（同 芝垣氏）と話しており、東京オートサロンでも注目を浴びたことから、ますます市販化に期待したいモデルです。