「Honda・テックマチックシステム」がかなえる移動の自由──当事者試乗と開発者対談で見えた福祉車両の最前線【PR】

「移動の喜びを一人ひとりに」。Hondaは1976年から半世紀にわたり福祉車両の開発を続けてきました。今回はパラサイクリングの官野一彦選手による手動運転補助装置「Honda・テックマチックシステム」の試乗レビューに加え、開発者対談を通じて、日本唯一の足動運転補助装置「Honda・フランツシステム」 をはじめとするHondaの福祉車両づくりと「移動の自由」への情熱に迫ります。

取材はHonda福祉車両開発の総本山といえるホンダアクセス本社(埼玉県新座市)で行った。左からパラサイクリング界で活躍する官野一彦さん、福祉車両の開発に長年携わるホンダアクセスの清水隆彦さん、筆者(まるも亜希子)

開発・販売を続けて50年──Hondaの福祉車両へかける思い

 技術とアイデアで人の役に立ち、世の中のためになるモノづくりをすること。これはHondaの創業者・本田宗一郎から受け継がれる、Hondaの原点ともいえる理念です。

Honda初の福祉車両として1976年に誕生した、シビックの手動運転補助装置(Honda・テックマチックシステム)搭載車。2026年は50年の節目となる

 戦後の疲弊から日本が立ち直り、ようやく一般家庭にもマイカーが普及し始めた1976年に、いち早く福祉車両を発売したのもそんなHondaらしいところ。それは体の状態にかかわらず「自分で運転したい」という思いに応える手動運転補助装置「Honda・テックマチックシステム」を搭載したシビックでした。

1976年のシビックに搭載されたHonda・テックマチックシステム。アクセルとブレーキをつかさどるコントロールアームは、バイクのハンドルグリップの形状や仕組みが応用されていた(写真は当時のカタログを開いた状態)

 さらに1980年代に入ると、ドイツのエーベル・フランツ氏が開発に成功した、両上肢が不自由な人が両足の操作だけで運転できる技術を直接フランツ氏から受け継ぎ、1982年に日本仕様にして発売。当時の日本は両上肢が不自由な人の免許取得が認められておらず、Hondaは道路交通法の改正も働きかけたといいます。

 そうして足動運転補助装置「Honda・フランツシステム」が誕生しました。最新モデルは2026年7月にマイナーチェンジしたフィット e:HEVに架装ができます。

Honda福祉車両の歴史年表。2026年7月にHonda・テックマチックシステム、10月8日にHonda・フランツシステムがモデルチェンジ。どの時代も運転しやすい人気車種が福祉車両に選ばれてきた

 これらの「自操式」福祉車両だけでなく、1995年からは「介護式」となるスロープを装備した車いす仕様車や、乗り降りをサポートするリフトアップシート車、回転シート車もラインナップに加わりました。

 2020年からは、Honda純正アクセサリーの企画・開発・販売を手掛けるホンダアクセスが自操式車両の開発を引き継ぎ、「移動の喜びを一人ひとりに」を合言葉として誰もが自分らしく移動できる社会の実現に取り組んでいます。

この記事では、手動運転補助装置(Honda・テックマチックシステム、写真右)と足動運転補助装置(Honda・フランツシステム、写真左)を搭載したフィット e:HEVを紹介する(※今回の撮影車両は従来モデルをベースとした開発テスト車両)

 今回は、普段から毎日のように愛車を運転しているというパラサイクリング選手の官野一彦さんに、実際にHonda・テックマチックシステム搭載のフィット e:HEVに試乗していただき、操作感や乗り心地などリアルな感想を尋ねていきます。

 また、ホンダアクセスにおけるHonda・テックマチックシステムとHonda・フランツシステムの開発責任者であり、認定人間工学専門家の清水隆彦さんに、開発エピソードや技術に込めた思いなどを伺いました。

右|官野一彦(かんの かずひこ)
パラサイクリング選手。千葉県出身。22歳での事故を機に車いす生活となる。車いすラグビー日本代表として2016年リオパラリンピックで銅メダルを獲得後、2020年にパラサイクリングへ転向。アジア選手権で優勝を果たすなど第一線で活躍中。日々、練習拠点や講演先への移動のために自らクルマを運転しており、現在は2028年ロサンゼルスパラリンピック出場を目指し挑戦を続けている。

左|清水隆彦(しみず たかひこ)
ホンダアクセス Honda・テックマチックシステム、Honda・フランツシステム開発責任者。大学時代から福祉車両を研究し、入社後はインテリア開発等を経て2020年より本格的に福祉車両開発を担当。人間工学の知見を生かし、当事者に寄り添った純正ならではの車両開発を追求している。

試乗で実感! 優れた操作性とメーカー純正ならではの魅力

 愛車の運転席に座ったまま後席から車いすを取り出して広げ、乗り換える動作にとても手慣れている官野さん。

「クルマがないと生きていけないですね。年間だと数万キロは運転していると思います。以前はHonda車に乗っていたこともあって、今日はすごく楽しみにして来ました」(官野さん)

最新の電子制御装備や安全装備の話を聞き、技術の進歩に驚く官野さん。普段のカーライフでは、パラサイクリングの競技用自転車を自身で積み下ろししているという(パラサイクリングの写真は官野さん提供)

 現在は別の運転補助装置を使っていますが、以前からHonda・テックマチックシステムにも興味を持っていたそうで、さっそくフィットの運転席に乗り込みました。

「クルマを運転する上で一番大変なのは乗り降り」という官野さん。フィットは乗降のしやすさも特長

「いいですね! 足元のスペースが広々しているので足が引き込みやすいですし、ちゃんと真っすぐな姿勢で座れます」(官野さん)

 早くも官野さんから笑みがこぼれます。Hondaの運転補助装置は車種専用で開発しており、後付け感が少ないことが特長のひとつ。搭載後もそのまま、もともとのハンドルとペダルでも運転することができます。清水さんがひと通りの操作方法を説明すると、官野さんはすぐに習得した様子です。

操作方法を説明する清水さんと、普段の愛車との違いを確認する官野さん

「他社のシステムは物理的にペダルを手動で動かす仕組みになっていることが多いですが、Honda・テックマチックシステムはワイヤーで操作するためスペース効率がよく、見た目もなるべくインテリアになじむよう気を配っています」(清水さん)

Honda・テックマチックシステムの根幹を担う「コントロールグリップ」。後ろに引けばアクセル、前に押せばブレーキが作動する。グリップの側面と前面にはブレーキロック、ウインカー、ハザード、ライトのHI/LO、ホーンなどのスイッチが備わる
片手でのステアリング操作をサポートする「ハンドル旋回ノブ」を装備。ノブは回転するので握りを変えずに操作できる。ハンドルの裏には「左手用ウインカーレバー」が備わっている
2026年モデルのフィットのマルチビューカメラシステム装備車へ適用拡大するにあたり、福祉車両専用装備のユニットとの干渉を避けながら設置するのには苦労があったと清水さんは語った

 官野さんは現在の愛車に10年以上乗り続けているそうで、オートブレーキホールドを使うと「D」のままで手をレバーから離しても停止保持できるフィットに「すごく便利ですね!」と、車両そのものの進化にも驚いていました。

 いよいよ、一般道へ試乗に出かけます。官野さんは敷地内で少し操作の加減を試すと、すぐにスムーズに走り出しました。

助手席に清水さんを乗せ、周辺の一般道で1時間ほどの試乗へ。ストップ&ゴーや交差点での右左折を通じて、日常の走行シーンにおける操作感をじっくり確かめた

「いつも使っている装置と全然違いますね。軽い力でも操作できるので、これなら僕よりも腕に力が入れにくい方でも運転しやすいと思います。コントロールグリップへの伝わり方もダイレクトというか、加速もブレーキも反応がスムーズで、思った通りに操れるのがすごい! 微妙な調整もしやすいです。とくに、ブレーキをかけるのが大変な方も多いので、これはすごく安心だと思います」(官野さん)

フィットは初めて乗ったと話す官野さん。視界が広く運転のしやすいパッケージで、昔からHondaの空間づくりとデザインが好きだと語った
こぶしを握り込めなくても、手のひらで包み込むように回せる「ハンドル旋回ノブ」。巧みに使いこなし、なめらかで軽快なハンドル操作を見せた

とくに高評価だったのはブレーキとアクセルの反応の良さとなめらかさ。「純正ならではだろうし、技術の高さが走り出した直後から感じられた」と官野さんはいう
終始にこやかに試乗を楽しんでいた官野さん。仕事などで関東から九州まで走ることもあるという。シートに座ったときの姿勢の楽さは大事なポイントだと話した

 また、ガチャンガチャンとした操作音が出ないことや、フィット e:HEVの2モーターハイブリッドはEVモードでモーターのみでの走行時間も長いため、車内がとても静かなことにも感心していた官野さん。数分後にはもう、まるで自分のクルマかのようになめらかに運転していました。

「うわぁ、本当にいいですね。最新の純正の装置ってこんなにいいんだ、と思いました。これはもう欲しくなっちゃいますね」(官野さん)

 試乗を終える頃には、官野さんが純粋にドライブを楽しんでいる様子が印象的でした。ここでHonda・テックマチックシステムはどのような思いで開発されているのか、あらためて清水さんに伺いました。

試乗後に語り合うふたり。アフターパーツメーカーの製品だと、一つひとつ装着パーツを選ばなければならず、面倒で車両が完成するまでの時間もかかると官野さん。清水さんは「Hondaの福祉車両はそういう意味でも選ばれています」と話した

 もともと大学時代に、福祉車両にまつわる研究をしていたという清水さん。ホンダアクセスに入社後はインテリアの開発に携わりながら、いくつかの福祉アイテムのプロジェクトにも参加してきており、2020年から本格的に運転補助装置の開発を担当しているといいます。

2020年にフルモデルチェンジを果たしたフィット。清水さんはちょうどこのタイミングから、福祉車両の開発に専念した。2026年のマイナーチェンジではマルチビューカメラシステム装備車への適用拡大に成功するなど、いっそう魅力を増したという

「目指しているのは、福祉車両が当たり前にある世界です。まだまだ日本では特別なものになってしまっていますが、われわれのようなメーカーがつくって、発信していくことも周知につながるのではないかと思っています。そして、メーカー自身もその世界のことをもっと知っていく必要があります。Hondaには長年の開発で積み重ねてきたノウハウがあり、それを守っていけばある程度いいものは完成するという自負がありますが、もっと進化させてユーザーに寄り添ったものにするためには、やはり知ることと、開発を続けていくことが重要なのだと思います」(清水さん)

純正だからこそ、パーツの美しさ、配線類の取り回し、インテリアとのマッチングにもこだわることができる

 運転補助装置の開発では、開発者自身が自分では使い心地を試せないことがほかの開発と違うところ。そのため、実際にユーザーに会って声を聞くことを大切にしているといいます。

官野さんの試乗中も絶え間なく操作性や乗り心地について話し合っていた

「とくに、Honda・フランツシステムがあったからこそ出会えた人たちがたくさんいます。クルマは両手でハンドルを握って運転するものだという既成概念がありますので、両上肢が不自由な方はまさか自分がクルマを運転できるとは思ってないんです。なので、なかなか認知されにくいところもあるんですが、だからこそ、乗ってくれた方の声は貴重ですし、すごく喜んでもらえるんです。本運転補助装置をご指名いただく場合がほとんどで、この装置ありきでクルマが購入されるという珍しいケースです。それだけ、自分で運転したいと思っている方がいるということなんですよね。もっともっと当たり前にしていきたいですね」(清水さん)

 次のページでは、足動運転補助装置「Honda・フランツシステム」を見ていきます。

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