人身事故を起こしたら「逮捕」される? 交通事故での「逮捕される・されない」境界線はどこにある?

交通事故では、池袋で発生した人身事故のように、多くの被害者を出しても逮捕されず、逆に物損事故で逮捕されることもあります。「逮捕される・されない」の基準はどんなものなのでしょうか。

交通事故を起こしたとき、真っ先にやるべきことは?

 交通事故は、できれば誰もが避けたいものですが、突然起こってしまうことがあります。
 
 自分がクルマを運転中に事故を起こす、いわゆる「加害者」となってしまったときの対応は、道路交通法第72条に記載されているとおり「直ちに運転を中止し、負傷路上での負傷者を救護し、道路における危険を防止するなどの必要な措置を講じなければならない」が基本行動です。

交通事故で逮捕されるのはどんなとき?
交通事故で逮捕されるのはどんなとき?

 そこで気になるのが、交通事故を起こしたことで逮捕されるのか否かということ。

 2019年4月に東京・池袋で発生した交通事故では多くの被害者が出ましたが、このとき、ドライバーは逮捕されず書類送検となったことが物議を醸しました。その一方で、物損事故でも逮捕されることがあります。

 弁護士の資格を持ち、企業の法務部に所属するU氏に話を聞いてみました。

「交通事故が発生してしまった場合は、負傷者の救護が最優先されます。また警察や救急への通報、高速道路であれば管理会社にも連絡する義務があります。

 できるだけ速やかに自分の加入している任意保険会社へ通知することも必要です」

 ちなみに、警察への通報は運転者の過失まで報告する義務はないようです。これは日本国憲法第38条に「何人も事故に不利益な供述は強要されない」というものに該当するもの。

 ただし、事故がいつ・どこで・負傷者の有無・破損したものや損壊の程度・車両の積載物の有無(危険物なのかも含めて)・事故についてとった措置などの報告を怠ると処罰の対象になるのだそうです。

 では、交通事故を起こして「逮捕される・されない」の基準はあるのでしょうか。どのような状況で交通事故を起こすと逮捕されるのでしょうか。

「これは交通事故の状況や被害の程度、飲酒運転やひき逃げなどの悪質かつ重大な交通違反があるかないかで、かなり違ってくるとされています。

 被害者が意識不明や後遺障害が残るような重症事故、または死亡させてしまったような事故の場合と、飲酒運転や無免許運転(免停期間を含む)など重大な交通違反をしている場合は、逮捕される可能性が高いといえます。

 これは『刑事処分を逃れるために逃亡や証拠隠滅の恐れがあり、逮捕の必要性がある』と判断されるためです」(弁護士資格を持つU氏)

 ただし、被害者側の過失(急な飛び出しや信号無視など)が大きい場合は、逮捕ではなく在宅捜査になるそうです。

 ここで注意したいのは「軽微な接触事故」の場合。被害者の怪我も軽傷だからと後日報告すると証拠隠滅の可能性を疑われ、逮捕にいたるケースもあるといいます。

 同様に、ひき逃げや当て逃げも道路交通法の「救護義務違反」や「報告義務違反」とみなされ逮捕されることも。

 どんなに軽微でも事故が発生した時点で、警察への報告は必ずしておかないと、後々面倒なことになるというわけです。

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