なぜ凹んでる? トヨタ「ハイエース」の謎… 「張り出しフェンダー」じゃないワケ
トヨタ「ハイエース」のフェンダー部分は凹んだ造形となっています。一般的には張り出す傾向にあるフェンダーですが、なぜ凹んでいるのでしょうか。
ホイールアーチのへこみはデザイン面だけでなく機能面でも効果アリ
商用車のなかでも人やモノを運ぶクルマとして、ダントツの販売数を誇っているのがトヨタ「ハイエース」です。
シンプルなエクステリアデザインですが、ホイールアーチになぜかへこみが設けられています。このへこみには意味があるのでしょうか。
街中で見かけない機会がないほど商用車で活躍しているハイエース。
2004年に登場した現行ハイエース(200系)は、用途に合わせて様々なバリエーションが用意されており、多くの人が乗車できるモデルや、大量の荷物が積載できるモデルなどが展開されています。
日本のみならず東南アジアなど一部の海外でも高い支持を得ており、2019年にはフルモデルチェンジして「ハイエース(300系)」が登場しています。
一方の日本では200系の需要が高いことからそのまま販売されていおり、近年では圧倒的な積載性を活用して、釣りやキャンプなどアウトドアでも利用する人も増えてきました。
エクステリアは無駄がなく機能美を追求した結果、塊から削りだしたようなシンプルな造形です。
そのエクステリアデザインのなかでもアクセントになっているのが、ホイールアーチに沿ったへこみです。
多くの乗用車では、ホイールアーチ周辺は外側に張り出していることが多く、ハイエースのようにへこみを持たされているケースはまれです。
たとえば、トヨタ「86」やスズキ「ジムニーシエラ」などを見ると、ホイールアーチ周辺はボディ全体に対して大きくふくらんでいることがわかります。
クルマの動力性能を高めるためには、基本的にホイールの位置は全幅に対してワイドであるほうが好ましいとされています。
しかし、道路運送車両法では、公道を走るクルマは原則としてホイールがボディからはみ出すことが認められていません。
そのため、動力性能が重視されるスポーツカーなどでは、ホイールアーチ周辺にふくらみを持たせることでボディの全幅を拡張し、ホイール位置をワイドにしているという側面があります。
では、なぜハイエースのホイールアーチ周辺がへこんでいるのでしょうか。ハイエースを手掛けるトヨタ車体の担当者は次のように話しています。
「ホイールアーチ上部をえぐり上向き面をつくることで、面の陰影との組合せでホイールフレア周りの力強さを表現し、ホイール全体を大きく見せることをねらう、というデザイン上の意図があります。
一方で限られた全幅の中で荷室を最大限確保しつつ、剛性を高めるという構造にするという、機能面における重要な意味があります」
ハイエースのような商用バンでは室内の広さが最重要視されるため、ボディパネルは全幅いっぱいにまで広げられるのが一般的です。
しかし、平面的なボディでは剛性が不十分になることがあるため、プレスラインを設けることで剛性を高める必要があります。
つまり、ハイエースのホイールアーチ周辺のへこみは、デザイン上のアクセントとしての役割はもちろん、ボディ剛性を高めるという非常に重要な役割を持っているようです。
ちなみに、ボディパネル自体を厚くすることで剛性を高めるという方法もありますが、重量増やコスト、そして室内の広さの最大化を考えると、プレスラインによって剛性を高める方法がハイエースにとっては最適と言えそうです。
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ハイエースのライバルとされる日産「キャラバン」も、ボディサイドに大胆なプレスラインが入っています。
このプレスラインも、デザイン上のアクセントとなると同時に、剛性を高めるというねらいがあるようです。
車の記事のライターなのに、プレスラインを凹みと表現する知識の無さは如何なものか。