クルマの足回りってどんな感じで作られる? カヤバの「工場と開発センター」を見て感じたコトは

自動車メディアと日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)の一部に向けて、カヤバが試乗会を開催しました。ありとあらゆる油圧機器を製造しているカヤバが、これからの時代のために開発している技術を学ぶことができました。

電動や自動運転こそ油を使うというそのココロは?

 カヤバ(KYB)がこのほど、自動車メディアと日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)の一部に向けて、岐阜北工場と開発センターで技術ワークショップと試乗会を開催しました。

 カヤバはありとあらゆる油圧機器を製造している会社で、自動車関連としては、4輪と2輪それぞれのサスペンション用ショックアブソーバ、さらにパワーステアリングや電動油圧ポンプといった車載機器の事業があります。

 ワークショップは、ショックアブソーバの生産ライン見学からスタートしました。

カヤバ岐阜北工場の内部。内製率の高さが特徴
カヤバ岐阜北工場の内部。内製率の高さが特徴

 ショックアブソーバの生産だけで年間2600万本超にも及ぶ岐阜北工場の特徴は、とにかく内製率が高いことです。スチールの板材を切り出して筒状に丸めて、溶接してシェルケースを作るところから、外注ではなく内製。また、工作機械や生産設備すら、85%が内製です。ケースからオイルシールまで一貫して内製することで、コストや品質の管理はもちろん、性能にまで及ぶノウハウが自社内に蓄積できるとのことです。

 この工場では太陽光パネルに次いでコージェネレーション(熱電併給)の設置が進められています。工場の使用電力において、クリーンな自家発電エネルギーでまかなえる割合を増やし、年間5000トンずつCO2排出を減らして2030年には2018年の半分量にもっていくというもの。さらにカヤバは、ショックアブソーバの筒内で用いる作動油をヤシの実油、つまり天然由来の基油に置き換え、将来的に回収と再使用ができる環境対応型の作動油の開発を進めています。

 それが環境作動油「サステナルブ(サステナブル+ルーブリフィケーション=潤滑を合わせた造語)」です。驚くことにこの作動油は、カヤバ社員チームによるトヨタ「GRヤリス」での全日本ラリー参戦など、すでに実戦で用いられて開発されています。案内してくれたスタッフの「ウチで扱っているショックアブソーバや電動パワステ、ポンプといったコンポーネンツは、BEVになっても車に使われ続けるものばかりなんです」という言葉が、印象に残りました。

テストコースにて試乗を実施

 2日目は開発センター内のテストコースで、大別して3種類、いずれも市販車にすでに搭載されているか、直近で搭載した車両が市販されるであろう、異なるテクノロジーによるショックアブソーバを試しました。

中国のEVメーカーBYD「ATTO 3」にはカヤバが提案する「高付加価値」タイプのショックアブソーバが装着された
中国のEVメーカーBYD「ATTO 3」にはカヤバが提案する「高付加価値」タイプのショックアブソーバが装着された

 まず、BYD「ATTO 3(アットスリー)」のノーマル車と、「高付加価値」タイプのショックアブソーバ装着した別の「ATTO 3」にそれぞれ乗り、適度に荒れた路面を含む山岳路テストコースで比較しました。

 ノーマルのままでは明らかに操舵(そうだ)に対する挙動が頼りなく、ぴょこぴょこする場面でも、高付加価値タイプはうねりにも路面パッチにも、どっしりと明らかに好ましい落ち着きを示しました。これは近頃とくにフランス車で採用されている「ダンパー・イン・ダンパー」と呼ばれる筒内オイルストッパーが効いていて、さらには「ADC」という高周波の細かい揺れを、初期から効果的に吸い込む機構が作用しているようです。

 次も機械式ショックアブソーバの比較でノーマルのカムリと、「次世代ピストン&ベースバルブ」を用いたショックアブソーバ装着車の双方に乗りました。ピストンとベースバルブのオイルの流路形状を最適化することで、確かに操舵に対する応答性がノーマルより上がっています。

 山岳路ではもう一台、先に説明をした環境作動油「サステナルブ」を用いたトヨタ「カローラスポーツ」にも乗りました。比較ではないので何ともいえませんが、普通に走れること自体がひとつの達成であり、添加剤で作動油の摩擦係数を変化させるなど、さまざまなチェックをしている段階といいます。

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