スバルの主力「インプレッサ」なぜ“立場”が逆転? 派生SUVが先に登場し、セダンが廃止された事情とは
新しいセダンの登場を期待する声も
では、スバルの販売店では、インプレッサG4の廃止をどのように受け止めているのでしょうか。
「開発や生産の効率化を重視すると、インプレッサG4の廃止は仕方ないでしょう。しかしG4は保有台数も比較的多く、法人のお客さまも少なくありません。
とくに法人のお客さまは定期的に乗り替えるため、堅実な需要でもあります。
加えて、今はインプレッサG4のようなサイズのセダンが減っており、新しいインプレッサセダンの登場に期待するお客さまもいらっしゃいます」
現在はセダンの販売不振により、新車販売されている車種も激減しています。特に全幅が1800mmを下まわる国産セダンは、カローラセダン&アクシオ、マツダ3セダンだけです。
先代インプレッサG4は、全長が4640mm、全幅は1775mm、最小回転半径は5.3mですから、小回りが利いて運転がしやすかった点が特徴でした。
しかも先代インプレッサG4は、室内空間に余裕がありました。身長170cmの大人4名が乗車した時、後席に座る乗員の膝先空間は、握りコブシ2つ半です。
ライバル車のカローラセダンやマツダ3セダンは、握りコブシ1つ半ですから、先代インプレッサG4は運転のしやすいサイズで3~4名が快適に乗車できるモデルでした。
セダンはコンパクトでもフォーマルな雰囲気があり、法人需要を含めて、3~4名で乗車する機会も多いです。従って全幅が1800mm以下で後席の広いインプレッサG4は、根強いニーズに支えられていたのです。
インプレッサシリーズに占める販売比率が10%以下では廃止になっても仕方ありませんが、販売店の「新しいインプレッサセダンに期待するお客さまもいらっしゃいます」という事情も分かります。
また最近は、新車の販売店から「若いお客さまがセダンに新鮮味を感じて、購入を希望されている」という話も聞かれ、不人気といわれるセダンですが、以前に比べると、状況が少しずつ変わってきました。
もともとセダンは重心が低く、後席とトランクスペースの間に骨格や隔壁があるため、ボディ剛性を高めやすいうえに、後輪が路上を転がる時に発する音も車内に響きにくいという長所があります。
セダンが走行安定性、乗り心地、静粛性の向上に有利なボディであることは、今も昔も変わりありません。
スバルに限らず、「安心と快適」の観点からセダンを見直して、アピールを行う余地があると思います。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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