車の「バンパー」ってもはや「死語」の世界!? 安全守る「鉄の棒」はどこへいったのか

21世紀に入り本来の「衝撃吸収」という目的が形骸化していった

 9代目クラウン(1991年~1995年)、10代目クラウン(1995年~2001年)、11代目クラウン(1999年~2007年)へとフルモデルチェンジを重ねるたびに、クラウンのバンパーは次第にボディと一体化していきます。

 立派さや上質さが重視されてきた高級車のクラウンとはいえ、燃費や操縦安定性にも影響を及ぼす空力性能の向上も求められてきたのです。

いまや「バンパー」という部位自体を特定することすら難しくなってきました[写真は最新型(16代目)トヨタ「クラウン」(クラウンクロスオーバー)]
いまや「バンパー」という部位自体を特定することすら難しくなってきました[写真は最新型(16代目)トヨタ「クラウン」(クラウンクロスオーバー)]

 そもそも本来の用途であった衝撃吸収ですが、実はバンパー単体だけでなく、クルマのフロント骨格部全体で衝撃を受け止めることで客室部を守るという安全設計思想は、既に1960年代には一般化していました。

 サイドモールとともに、バンパーは依然として軽度の衝突から車体を守る役割を果たしているものの、それもフォルムとの一体化にともない、形状の意味合いすら形骸化していくのです。

 21世紀に入り、12代目クラウン(2003年~2008年:通称「ゼロクラウン」)からはグリルがバンパー側に付くように。

 さらにボディとの連続性が持たされ、高級感とともにスポーティさや革新性も併せ持つスタイリングとなりました。

 続く13代目クラウン(2008年~2012年)では、フロントバンパー形状はもはや以前のように前方へ飛び出ることもなくなりスムーズ化。14代目クラウン(2012年~2018年)以降では、グリルが上下に大幅拡大し、バンパー部分まで浸食しはじめます。

 16代目となる現行型「クラウンクロスオーバー」(2022年~)となると、「バンパーというパーツ」が視覚的に視認しづらくなるほどに、バンパーは車体のフォルムと完全に同一化するに至りました。

※ ※ ※

 こうして歴代クラウンの変遷を眺めてみると、バンパーはデザインの進化に合わせて大きく姿を変えてきたことがわかります。

 今後、エンジンを搭載しないEV(電気自動車)も増えていくなか、クルマのバンパーはどのような形になっていくのでしょうか。

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Writer: 遠藤イヅル

1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。

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