斬新すぎる!? トヨタ「プリウス」なぜアルミホイールに“キャップ”かぶせた? 異例の手法を取り入れる車が増加する訳
トヨタ「プリウス」の歴代モデルは、アルミホイールにホイールキャップを装備しています。ホイールキャップは通常、スチールホイールの見た目をよくする装備なのですが、プリウス以外でもアルミホイールと組み合わせる手法を採用するモデルが増えているようです。なぜなのでしょうか。
見栄え重視のアルミホイールをあえて隠す理由とは?
トヨタ「プリウス」のホイールは、初代モデルから、例外なくアルミホイールにホイールキャップ(ホイールカバー)を被せていました。もちろん、これは一般的なことではありません。
通常であればホイールキャップは簡素なデザインであるスチールホイールの見栄えを良くするために採用されるもので、アルミホイールにホイールキャップをかぶせる例は初代プリウス登場以前には基本的になかったのです。
あくまで一般論ですが、アルミホイールはそれ自体が“見せる”アイテムとなっており、そのため、わざわざキャップをかぶせて隠してしまうメリットがないというのがその理由でしょう。
ところが、常識外れともいえる、アルミホイールの上にホイールキャップをかぶせた手法を取り入れるモデルが近年増加。
たとえば日産は現行モデルの「ノート」や電気自動車の「アリア」、そして軽EVの「サクラ」などでアルミホイールにホイールキャップを組み合わせているのですが、そのメリットはどこにあるのでしょうか。
新型プリウスの開発者は「狙いは空力性能の向上」と言います。昨今は燃費が重要視されますが、そのためには空気抵抗を抑える必要があり、ホイールキャップによってホイールの側面をできるだけフラットにして空力性能を高めるというわけです。
そう聞くと、「側面がフラットに近いデザインのアルミホイールにすれば良い」と思う人もいるかもしれません。
空力だけでいえばそれで済みますが、しかし、そうすると燃費にとって不都合な別の影響が出てきてしまいます。それは「重量増」です。
側面がフラットなデザインのホイールは肉厚となり、実現するためにはアルミを多く使わないといけません。そしてそれが重量増となり燃費を悪化させてしまいます。
そこで空気抵抗を減らしつつ重量増を避けるための手法として「アルミホイール+ホイールキャップ」としたのです。
補足すると、ホイールキャップに見栄えを任せれば、ホイール自体はデザインを気にせず必要最低限の強度だけを持たせたシンプルで軽い構造とすることが可能。“見た目のため”にアルミを盛り付けることによる重量増をなくせるというわけです。
たとえばアリアでは、ホイールキャップを組み合わせたことで、素材や製法を置き換えることなく一般的なアルミホイールに比べて1本あたり1kg以上も軽量化できているといいます。この軽量化は燃費性能だけでなくハンドリングや乗り心地の向上にもつながるのは言うまでもありません。
つまり、「空力のためだけど、重量増も抑えるためでもある」というのが、アルミホイールにホイールキャップを組み合わせる理由となります。
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ちなみに、初代登場以来アルミホイール+ホイールキャップの組み合わせを継承していたプリウスですが、新型では上位グレードに(ホイールキャップがなく)アルミホイールだけの仕様が存在します。開発者によるとその理由は「燃費よりもデザインを重視したから」とのこと。
そんなホイールのセレクトからもわかるように、新型プリウスが“燃費スペシャル”に徹していたこれまでのプリウスとは異なる路線へシフトしたことを感じられるのが面白いところではないでしょうか。
Writer: 工藤貴宏
1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。
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