セナがくれた包帯 元F1ドライバー中嶋 悟さんが語る現役時代、そして2017年の展望

「手を振る観客の姿も見えます」

「もっとも印象的なレースは?」という問いに中嶋さんは、やはり最初と最後だとしつつ、引退の年である1991(平成3)年の第15戦「日本グランプリ」を挙げました。当時、中嶋さんはイギリスに本拠を置くレーシングチーム、ティレルに所属。レースはマシントラブルによる途中リタイアで終えています。

「シーズンも終盤ということで、チームはクルマを6台持ち込んで、うち4台を僕のために用意してくれていたのです。チームオーナーであるケン・ティレルのおじさんが『どれでいく?』と選ばせてくれたのですが、そのクルマがレース中に壊れてしまったのです。ハンドルを切っても曲がらなくなってしまって。自分で選んだので、まぁしょうがないかなと思いました。そんな結果に終わりましたが、鈴鹿サーキットが異常なくらい燃えていたので、感動しましたね」

 このレースは、すでにシーズン限りで引退を表明していた中嶋さん最後の母国グランプリとあって、鈴鹿サーキットの観客席は日の丸の旗や中嶋さんを応援する横断幕で埋め尽くされていました。

 レース中も観客席や周囲の様子は見えているそうで、鈴鹿サーキットのシケインからは、ホームストレートの奥に白子の海岸が見えるそうです。また、コーナリングの際はさすがに無理としつつも、「レースに集中してはいるのですが、ヒマなときはヒマなので」ストレートなどでは手を振る観客席を眺めるくらいの余裕があるといいます。

「お客さんにいいところを見せたかったけど、見せられないのは、やめていくスポーツ選手のお決まりですね」

 これに関し昨シーズン、2016年のF1ワールドチャンピオンを獲得した直後、すぐに引退を表明したニコ・ロズベルグについて中嶋さんは、「かっこいいですよね。もうレースに負けることはないから、ずっと気分がいいままでしょう」と評しました。

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