「センターメーター」なぜ廃れた? 初代「プリウス」から普及するも“運転席前”への変更が続出する訳

一時期はさまざまな車種で採用された「センターメーター」ですが、近年はその数を減らし、今や風前の灯火とも呼べるほど少なくなっています。センターメーターはなぜ衰退したのでしょうか。

センターメーター誕生のきっかけは部品の合理化

 2000年代前半に、さまざまな車種で「センターメーター」が採用されましたが、近年はその数を減らし、今や絶滅寸前というほど少なくなっています。

 あれだけもてはやされたセンターメーターは、なぜ衰退してしまったのでしょうか。

初代からセンターメーターを守り続けているトヨタ「プリウス」(4代目)
初代からセンターメーターを守り続けているトヨタ「プリウス」(4代目)

 センターメーターの誕生には諸説ありますが、かつて存在したイギリスの自動車メーカー「BMC(ブリティッシュ・モーター・カンパニー)」が製造した「ミニ」、いわゆる「クラシックミニ」が最初だといわれています。

 英国向けの右ハンドル仕様のほか、北米や欧州向けの左ハンドル仕様も製造しており、部品の製造工程を減らすためにセンターメーターが合理的な解決策だったというのが有力です。

 日本では1950年代から、少数ではあるもののセンターメーターを採用した商用車などがありましたが、我々が乗る普通車として認知が高まったのは、1997年に誕生したトヨタ「プリウス」に採用されたことでしょう。

 その後、トヨタ「アクア(初代)」といったファミリー向けのモデルやダイハツ「エッセ」「ムーヴ」、日産「エクストレイル(初代)」、「プレサージュ(2代目)」などにも採用され、左右対称のインパネのデザインが近未来感を感じさせたものでした。

 しかし、思ったほど評判が良くなかったのか、徐々に一般的な運転席前にメーターを戻す車種が増加。ファミリー向けモデルや軽自動車で多く採用されたことから、「センターメーターは高級感が感じられない」などの批判的な意見もあったとされています。

 思った以上に人気にならなかったセンターメーターですが、もちろん長所もあります。

 まずは、通常の運転席前では前方からメーターへと視点を移動させたときにピントが合いにくくなることもありますが、そもそも運転席から若干離れたセンターメーターならピントが合わせやすいとの判断もあったようです。

 しかし、これが諸刃の剣でして、メーターが遠くなると表示された細かい文字や目盛りなどが見にくくなる、というデメリットも生じることに。

 さらに走行中は前方から斜め下へと視線の移動量が意外に多く、通常の運転席前のメーターに慣れたドライバーにとっては咄嗟にメーターを探してしまうという意見も多かったようです。

 また、ナビゲーションの普及と進化によりディスプレーが大型化し、センターコンソール上に配置できるだけの十分なスペースが確保しにくくなったことも衰退の原因のひとつと考えられます。

 加えて、当初はどの座席からもメーターが見えることがメリットだと思われていましたが、助手席や後部座席の人にとっては速度表示を知りたい欲求はあまりなく、とくにファミリー向けのクルマや軽自動車では後部座席に子どもが乗るケースも多く、後部座席からメーターが見えなくても問題ないということになったのでしょう。

 決して悪い装備ではないものの、一部では不評も出ているセンターメーターをわざわざ製造する理由がなくなってしまった結果、「だったら普遍的なメーター配置でいいんじゃない?」というのが衰退した顛末のようです。

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