「ぶつからないクルマ」が「自動運転車」に進化!? スバルが世界初公開した「レベル2以上」実験車とは

「アイサイト」と「自動運転」は似ているようで目的が違う!?

 SIP-adusの自動運転実験車両をじっくり見てみましょう。

 ベース車両はスバルのコンパクトクロスオーバーSUV「XV」。特徴はカメラの数です。

 画像認識できる範囲が前方120度に対応するステレオカメラ、同じく前方に60度の単眼カメラ、さらに側方用に運転席と助手席の、いわゆる三角窓の横とサイドミラーの下部にそれぞれ1つの単眼カメラ、そして後方に単眼カメラがあり、合計8個の画像認識用カメラで全包囲に対応しています。

スバルの「自動運転車」実験車両はコンパクトクロスオーバーSUVの「XV」をベースにしていました[撮影:桃田健史]
スバルの「自動運転車」実験車両はコンパクトクロスオーバーSUVの「XV」をベースにしていました[撮影:桃田健史]

 さらに、多くの自動運転車が採用している、レーザー照射で周囲の物体の距離や形状を把握するLiDAR(ライダー)をルーフ前方に装着しているのが特徴です。

 こうしたデバイスを使う「自動運転車システム」について、スバルが提示した資料には、次のように表現されています。

「車両認識に加えて、歩行者・自転車、信号灯色を認識するため、車両側ではDNN(ディープ・ニューラル・ネットワーク)を用いたマルチカメラでの周囲認識を開発しました」

 DNNでは、車載コンピュータのシステムに対して、「教師データ」と呼ぶ大量のデータを様々な階層で覚えさせていきます。教師データとは、クルマの場合は、クルマの形を座標で示すことなどです。

 教師データからシステムが機械学習することで、これから先に起こるであろう現象を予想するというプロセスを踏みます。

 こうした自動運転車に対して、量産型のアイサイトは、カメラを通じて得たデータから画像を認識し、走行中にどのようなリスクがあるのかをドライバーに知らせ、またアクセル、ブレーキ、ハンドルなどの操作系を制御するものです。

 アイサイトは自車の周辺(特に前方)で起こっていることをできるだけ早く把握して、ドライバーとクルマの安全を守ることが目的です。

 つまり、これから先に起こるであろうことを予測して走行するという自動運転車とは、技術的には近い関係にあるものの、根本的な目的が違うと考えるべきでしょう。

 その上で、この自動運転車の自動運転レベルについて、スバルは「基本的には明示していないが、レベル2以上という表現が妥当」と説明します。

 レベル2とは、運転の主体がドライバーで、さらに高度なレベル3になると運転の主体がシステムに移る、という解釈が一般的です。

 レベル2までが高度運転支援システム、そしてレベル3以上が自動運転という区分けで説明する場合もあります。

 ただ、スバルがいう「レベル2以上」とはそうした意味だけではなく、「既存のアイサイトとは別の発想」というニュアンスが含まれているように感じます。

 なぜならば、現行の次世代アイサイト(最新版「アイサイトX」を含む)は、れっきとした高性能なレベル2なのですから。

 また、スバルを含めて、他の自動車メーカー、ベンチャー、海外の部品メーカー、そして大学などの自動運転実証チームも、仮にレベル3を超えたレベル4相当の技術を持っていても、SIP-adusでのお台場実証では運転席に技術者がいる状態でのレベル2での走行という解釈になっています。

 このほか、スバルはすでに発表している、自社サーバを使った車車間通信によって、自動運転車、またはアイサイト装着車が高速の合流地点でスムーズに走行できる実験についてもパネルなどで紹介しました。

 今後、量産型アイサイトが凄い進化も見せるのかもしれない…。

 そんな期待が高まる取材でした。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。

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