負けられない戦い…次なる「GR86」に繋げるために! 勝負と開発の両立に苦悩するクルマ作りの裏側とは
もっといいクルマに終わりはないが…最終戦までにやりたいことは?
―― もっといいクルマに終わりはありませんが、最終戦までにクリアしておきたい課題などはあるのでしょうか?
林:エンジンはカーボンニュートラル燃料の普及活動に加えて、皆さんを「あっ!!」と驚かせるような出力を出せることですね。最終戦に間に合うように頑張ります。
石丸:富士24時間はトランスミッショントラブルで完走できなかったので、25時間走らせても必ず完走できるようなトランスミッションを目指しています。
森:今年中にできるかわかりませんが、ジオメトリーの良さを引き出せるクルマづくりですね。
もちろんサスペンションだけでなくボディを含めた話になりますが、ドライバーに「この走りいいじゃん」といってもらえるようなクルマに仕上げていきたいです。
宇野:量産車で直結感を高める制御をレースカーに取り入れていますが、ドライバーからは「タイヤのグリップ感が解りにくい」というコメントが多いです。
恐らく使用領域が違うからだと思いますが、サーキット領域でも「凄いいい操舵感だよね」、「気持ちいいな」といってもらえるようなステアリングを実現したいと思っています。
―― ちなみに開発責任者の藤原さんからの無茶ぶりなどはありますか?
一同:それはもう(以下自粛)
レースは、ピットインのタイミングで順位が入れ替わるものの、最終的にはGR86が先行してBRZに18.5秒差を付けてゴール。
ちなみに、GR86がトラブルフリーでレースを走り切ったのは開幕戦以来となります。どんなに辛くても、どんなに苦しくても決して弱音を吐かなかった藤原氏ですが、ピンと張っていた緊張の糸が切れたのかゴール後に大粒の涙が……。
佐藤プレジデントもその苦労を知っているため、思わずもらい泣き。後ろを振り返ることなく、常に挑戦をし続けながら戦ってきたからこその涙です。そんな藤原氏に今回のレースを総括してもらいました。
「ようやくドライバー、チーム、メカの思いに応えられたかなと思っています。
ただ、まだまだ設計意図とドライバーのフィーリングが合っていない部分もあり、マシン的には満足いくものではないのも理解しています。
このプロジェクトのゴールは勝ち負けではありませんが、ドライバーは走る以上は『勝ちたい!!』、『速く走りたい!!』と思って走ってくれているので、その想いに応えていく必要はあるかな……と。
『レースで速く安心して走れる=次の開発に繋がる』と思っていますので、やはり結果にも拘わっていきたいです。
これから岡山、鈴鹿と続きます。まだまだ課題も多く急ピッチでクルマを育てていく必要はありますが、今日はこの勝利を素直に喜びたいと思います。ありがとうございました」(前出・藤原氏)
その表情はこれまでに見た事のない満面の笑顔だったのはいうまでもありません。
今回はGR86/BRZ共に大きなトラブルの無い真剣勝負でした。だからこそ、勝った喜びも大きいと思います。
次は10月15日、16日に開催される第6戦 岡山国際サーキットです。すでに1か月を切っていますが、チーム、マシン、そしてエンジニアの更なる成長を期待したいと思っています。全ては「もっといいクルマづくり」のために……。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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