負けられない戦い…次なる「GR86」に繋げるために! 勝負と開発の両立に苦悩するクルマ作りの裏側とは

GR86 CNFコンセプトを支えるエンジニアが語る! もっといいクルマづくりの裏側とは

 日曜日、ピットウォークを経てスタート進行です。GR86 CNFコンセプトは第2グループのフロントロウで、その斜め後ろにはBRZ CNFコンセプトが控えています。

 11時にフォーメーションラップが開始され、5時間の決勝がスタートしました。

 序盤からGR86 CNFコンセプトとBRZ CNFコンセプトは接近戦です。

 直線ではGR86が引き離しにかかりますが、コーナーではBRZが近づくといったバトルを展開となり、その模様は何度も公式映像で放送されるなど、今回は2台共にトラブルはゼロで、コース上でのガチンコバトルとなりました。

 ピット内も比較的余裕があるため、今回はGR86 CNFコンセプトの開発に関わった各領域のエンジニアに、この取り組みに関する話を聞いてみることにしました。

GR86 CNFコンセプトを支えるエンジニアが語る!
GR86 CNFコンセプトを支えるエンジニアが語る!

―― エンジンの変更、カーボンニュートラル燃料の対応と開発は苦労されたと思いますが。

 林(エンジン担当):カーボンニュートラル燃料の適合と並行して、出力アップにもトライしています。今回は噴射圧の引き上げで前回よりも15psくらいアップしています。ちなみに初戦からだと25ps弱の進化です。

―― どのような苦労が? もちろん全てが大変だと思いますが(笑)。

 林:一番はオイル希釈の問題ですね。普通のエンジンであれば空気をたくさん入れて燃料をたくさん噴けば出力は出るのですが、カーボンニュートラル燃料はそう簡単にはいきません。

 毎戦トラブルなので(汗)、直しては確認……の繰り返しですね。ベンチで問題なくても実走では課題が出てきますね。

―― ちなみに性能アップのための引き出しはまだお持ちですか。

 林:試してみたい事はたくさんありますよ。

―― トランスミッションはどうでしょうか? 富士24時間でのトラブルが気になります。

 石丸(トランスミッション担当):もちろん認識しています。

 エンジン出力に合わせて強化はしていますが、一般道での入力とサーキットでの入力の厳しさは違います。

 ここが我々は理解できていませんでした。そこで前回から計測器を搭載してトルク測定をおこなっており、その結果を元に強化メニューの検討を進めています。

―― 既製品の改良ではなく、新規開発をしたいという想いはありますか?

 石丸:もちろんやりたいですが、この先のMT需要を考えると難しいのも事実です。

 ただ、今のMTも小手先の補強ではなく、根本的に強くしていかないとダメだと思っています。

 同時にエンジン側と連携を取り、トランスミッションに負荷がかからない制御にも挑戦しています。

―― シャシですが、エンジン変更によりクルマのバランスが崩れ、「ドライバーから安心して走れない」という声を聞いています。

 森(サスペンション担当):先行開発ということで、ベースのGR86とは異なるサスペンションジオメトリーを採用していますが、まだその旨味が活かせておらず、その原因を探している……というのが現状です。

―― 今回はリアのスタビライザーを外して走行していると聞きました。これは新たな取り組みなのでしょうか?

 森:いや、本来ならスタビライザーを装着してサスペンションとのバランスを取りたいのですが、我々が想定したモノにはなっていないため暫定的な処置になります。この辺りは机上と実走行のズレが原因ですね……。

―― となると、元に戻すのでしょうか?

 森:「レースカーというのはどういう物なのか?」をもっと理解しながら、ジオメトリーの旨味を引き出せる「解」を引き出したいと思っています。

 初戦から比べるといい方向に来ていますが、ボディの剛性バランスを含めてまだまだ理想には届いていないのも事実です。

 ただ、菅生をスキップして検証をおこなって臨んだオートポリスは我々にとってターニングポイントで、ここから再スタート……といった感じですね。

 まだまだ学ぶことは多いですが、このクルマを鍛えていく過程や知見をどのようにして量産に活かすかが大事なことだと思っています。

―― ステアリング系もエンジン変更に合わせてレイアウト、機構含めて刷新されています。

 宇野(ステアリング担当):次期FRに向けた挑戦のひとつですが、正直いうと「何とか搭載させた」という段階で、評価までたどり着いていない……というのが本音です。

――とはいえ、目標はあるわけですよね?

 宇野:課題がたくさんありますが、試してみたいことはたくさんあります。EPSの制御も同様で、この場でスポーツ走行に適したアシスト特性を学び、量産車に活かしていきたいと思っています。

――ちなみに、この活動はご自身の普段の業務に活きていると思いますか?

 林:もちろんです。最初は「えっ、土日も仕事?」と思いましたが、もちろん、トラブルも起きるので浮き沈みもありますが、仕事自体は楽しんでやれています。

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