「実は間違っているかも!」 4WD無敵説は嘘だった!? 雪道トラブルで知っておきたいコト

4WD車が無敵はウソ!? 崖から落ちた場合の対象方法は?

 ●4WD車が無敵はウソ

 よく「僕のクルマは4WDだから雪道に強い」というような台詞を聞きます。

 たしかに、4つのクルマに効率よく駆動トルクを分配して走る4WDは、FFやFRに比べると走破性という面ではアドバンテージがあります。

 だからといって、雪道でスリップしないわけではありませんし、スタックもします。

 まず、軽自動車やコンパクトカーなどに採用されている4WDシステムですが、多くの場合は「スタンバイ4WD」という種類のシステムです。

 FFベースのシステムで、前輪が空転しはじめると車軸上にある差動制限装置が働き、後輪に駆動トルクを伝えるというものです。

 つまり、走行中のほとんどを前輪駆動で走り、空転したときのみに4WDになります。

 こうしたタイプの4WDは駆動トルクが前輪にかかっている(アクセルを踏んでいる)状態で空転して初めて4WDになるため、4WDであることへの過信をもっともしてはいけないクルマです。

 4WDといえば、スズキ「ジムニー」のようなオフロードタイプの4WDを想像する人が多いことでしょう。

 ジムニーを始めトヨタ「ハイラックス」、ジープ「ラングラー」は「パートタイム4WD」というシステムを使っています。

 通常はFRで走行し、トランスファーレバーを4WDに入れることで、はじめて前輪に駆動トルクが配分されます。

 直結4WDとも呼ばれていますが、これは前輪軸と後輪軸がプロペラシャフトで結ばれており、そこに差動制限装置(ディファレンシャルギア)が介在していないからです。

 前輪と後輪に回転差(速度差)があっても、それを吸収しません。この機構ゆえに“タイトコーナーブレーキング現象”という事象が発生してしまいます。

 雪道でこの事象が発生することはほぼありませんが、稀に急カーブなどを走行しているときに、この前後輪の回転差が原因となってスリップを起こすことがあります。

 また直結4WDの場合、一度コントロールを失ってしまうと、よほどのテクニックがなければ制御することができなくなります。

 最近では、この弱点を解消するため、アクティブトルクスプリット式(走行状況に合わせて前後輪の駆動トルクを常時制御)の4WDシステムを採用することが多く、さらに各種のトラクションコントロールによってスリップ抑制に努めています。

 ただし、こうしたシステムを持っていたとしても、雪道では完璧とはいえません。4WDであることの過信は禁物です。

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 ●側溝や崖側に落ちてしまったら!?

 走行中にスリップして、雪壁にぶつかるくらいなら幸運だといえます。

 ときとして、側溝にタイヤを落としたり、ガードレールのない崖側に車両の一部が落ちたりすることも。こうした場合は、落ち着いた行動が必要になります。

 まず1本のタイヤが側溝に落ちてしまった場合です。

 この場合は、まず前後のどちらに進めば脱出しやすいかを見極め、前の方が出やすいならタイヤの前、後ろの方が出やすいならタイヤの後ろに、近くにある大きめの石を集めて詰めていきます。

 石はスロープ状にしなければならないので、かなりの量が必要となりますが、根気よく作業しましょう。

 石が見つからない場合は、土や雪でも代用できますが、硬さによってはタイヤを載せると崩れてしまうことがあるため、試しながら見極めるしかありません。

 タイヤが前後2本とも落ちている場合は、ジャッキの出番です。

 2輪が落ちているときは、車体の一部が路面に付いてしまっていることもありますので、その部分を避けてジャッキを架けられるところを探します。

 場合によっては、ジャッキを2本架けないとジャッキアップできないケースもあります。

 雪道でジャッキを架けると、雪のなかに沈む可能性が高いので、ジャッキの下にフロアマットなどを敷きましょう。

 タイヤが溝から抜けるほど十分にジャッキアップしたら、ジャッキが倒れるくらい車体を道側に押します。

 これで脱出できることもありますが、ケースによってはエアジャッキがないと脱けられないこともありますので、その場合はJAFなどロードサービスを呼びましょう。

 崖側に落ちてしまった場合は、ともかく何もせず、すぐに警察に通報することです。

 最悪なのは、ハンドルを動かしたり、なかで人が移動すること。かえって崖下にクルマを落とすリスクが高まります。

 まずパニックにならず、警察に連絡しましょう。こうした作業は、車両を前後で支えて落ちないようにして作業をする必要があるため、一般ユーザーには機材やテクニックなどを考えても難しいといえます。

※ ※ ※

 雪道には、降雪地帯に住んでいても予測できないような危険が潜んでいます。

 アクシデントに対する最善の対策は、事前の準備と落ち着いた行動、これにつきるのです。

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Writer: 山崎友貴

自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。

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