ホンダ「フィット」はなぜ苦戦? 身内に強敵!? 小型車人気でもライバル勢に勝てない理由とは

フィット不調の原因は一体なに?

 ホンダの販売店は、フィットの売れ行きと顧客の反応について次のようにいいます。

「先代フィットがフルモデルチェンジの直前まで堅調に売れたので、新型は伸び悩んでいる面があります。

 また2021年にコンパクトSUVの『ヴェゼル』が発売され、従来型のフィットから乗り替えたお客さまもおられます。今はSUVの注目度が高いからです。

 そして『N-BOX』の好調な売れ行きもフィットに影響を与えています。N-BOXでは、車内の広さや積載性だけでなく、スライドドアの装着も人気を呼んでいます」

5つのスタイルが設定されるホンダ「フィット」
5つのスタイルが設定されるホンダ「フィット」

 N-BOXは2021年1月から10月の1か月平均届け出台数が約1万6000台に達し、フィットも顧客を奪われました。

 そして販売店が指摘するようにスライドドアのニーズも高く、スライドドアを装着するコンパクトカーのトヨタ「ルーミー」は、発売から5年を経過しながら2021年1月から10月の1か月平均登録台数が約1万1300台に達します。

 前述のようにコンパクトカーのヤリスとSUVのヤリスクロスを分割して算出すれば、ルーミーは小型/普通車の最多販売車種になるのです。

 軽自動車でもスライドドアを装着するN-BOX、スズキ「スペーシア」、ダイハツ「タント」、日産「ルークス」は人気が高く、いまでは軽乗用車の半数以上がスライドドアを装着しています。

 先ごろ加わったスズキ「ワゴンRスマイル」の売れ行きも好調です。スズキの販売店では「ワゴンR全体の50%から80%をワゴンRスマイルが占めています」といいます。

 このような事情で、フィットの需要を同じホンダ車でスライドドアを備える軽自動車のN-BOX、あるいはコンパクトカーでスライドドアを装着するルーミーが奪っている面もあるでしょう。

 フィットは全高を1550mm以下に抑えて立体駐車場も使いやすく、燃料タンクを前席の下に搭載して後席と荷室を広く設計した、実用的なモデルで、ガソリンエンジンを搭載した「ホーム」の価格は176万7700円です。

 これは、「N-BOXカスタムL」の176万9900円、「ルーミーG」の174万3500円に価格帯が近く、同じ実用指向の車種同士が競争してフィットが顧客を奪われた面もあります。

 また先に述べた通り、現行フィットが発売された2020年2月から2021年に掛けて、コンパクトカーとコンパクトSUVの新型車が数多く発売され、ヤリスクロスやヴェゼルも新型になっています。

 販売店が指摘した通り、今はSUVの注目度が高いので、ヴェゼルやヤリスクロスもフィットの売れ行きに影響を与えました。

※ ※ ※

 フィットでは、SUV風グレードの「クロスター」を除くとフロントグリルが極端に薄く、顔立ちの好みが分かれることも影響するでしょう。

 水平基調にデザインされたボディの側面も、側方と後方の視界が優れた安全性の高いデザインですが、外観の躍動感や存在感は弱いです。

 内装はインパネの上面を平らに仕上げて前方視界が優れていますが、立体的ではないので上質感の演出は難しいです。2本スポークのステアリングホイールも、ユーザーによっては見慣れない印象となっています。

 これらの造形は安全性や運転のしやすさではメリットがあるのですが、見栄えはいま一歩と受け取られやすいのも事実です。

 このようなさまざまな理由から、フィットは売れ筋カテゴリーのコンパクトカーでありながら、売れ行きが伸び悩んでいます。

 ただしフィットは優れた商品力を備えており、前述の通り視界が優れ、運転しやすいです。全高も立体駐車場を使いやすい高さに抑えながら、後席はミドルサイズセダン並みに広く、荷室の使い勝手とシートアレンジも多彩です。

 現行型では乗り心地も改善され、ハイブリッドの「e:HEV」は加速も滑らかです。価格は割安で、e:HEVは高機能なハイブリッドでありながら、1.3リッターガソリンエンジンとの価格差を売れ筋グレードの場合で約35万円に抑えました。

 デザインの評価と売れ行きはいまひとつですが実用的で買い得なので、コンパクトカーを購入するときはフィットも検討してみると良いでしょう。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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