ついに黒船襲来!? 「中国EV」対日輸出を本格化か 日本市場を席巻する日はくる?

乗用車でも中国製EVが席巻?そのXデーは?

 多くの人が気になるのは、乗用車でもいずれ中国製EVが席巻する日が来るのだろうか、という点でしょう。

「中国製のクルマが、日本の自動車メーカーのクルマにかなうはずがない」という意見、「中国製のEVが日本に進出したら、日本の自動車産業はいよいよ終わりを迎えてしまうから政府が阻止するはず」という意見があるかもしれません。

 おそらく、現時点では消極的・否定的な意見が大多数を占めるかもしれません。

 しかし、筆者の周りの業界関係者のようすを見ていると、大なり小なり「黒船」の到来にやきもきしているようにも思えます。

 実際、日々の生活で目にするもの、手にするもののなかには、中国製のものが少なからずあることは多くの人が知るところです。

 そこから類推すれば、遅かれ早かれクルマも中国製のものが増えてくると考えるのは自然なことです。

 筆者はこの10年間、中国各地のモーターショーなどに出向き、多くの中国製EVを目にしてきました。限られた状態ではありましたが、いくつかのEVに試乗することもありました。

 すべてが素晴らしい出来とはいえませんが、前述のNIOをはじめ、グローバルクラスの性能を持っていると思われるEVもあったというのが率直な感想です。

 しかし、中国製EVが日本の乗用車市場を席巻する日は(当面の間)来ないというのが筆者の見解です。

 そこにはいくつかの理由がありますが、もっとも大きなものは、日本がまだ将来的にEVを推進していくかどうか不明瞭という点などです。

 日本では、今後しばらくの間、EVの販売台数は増えていくと予測されますが、一方で燃料電池自動車(FCV)の開発やインフラ整備も進んでいくと考えられています。

 そうした市場よりも、すでにEVを推進していくことが確実視される市場、つまり中国国内はもちろん、北欧諸国やドイツ、カリフォルニアを中心としたアメリカなどの市場を狙うほうが合理的です。

かつて50万円中国EVとして話題となった「宏光 MINI EV」は性能も必要十分。
かつて50万円中国EVとして話題となった「宏光 MINI EV」は性能も必要十分。

 もちろん、日本には世界有数の自動車メーカーが多く存在していることも理由のひとつです。

 現在と同じ状況が今後数十年続くとは考えていませんが、少なくともこれらの日本の自動車メーカーたちがすべて中国自動車メーカーに敗北するとは考えにくいでしょう。

 それほどまでに、日本の自動車メーカーがこれまでに蓄積してきた、クルマづくりのノウハウは大きなものだというのが筆者の意見です。

 つまり、ほとんどのシェアを奪われるという意味で「中国製EVが日本を席巻する」という状態になる可能性は、若干の希望的観測を含んだとしても、現在34歳の筆者が元気にクルマを運転しているうちには起こり得ないと考えています。

 ただ、だからといって日本の自動車メーカーが安泰とも考えていません。商用車の例はもちろんですが、一部の高級EVなどの限定的なカテゴリーでは、近い将来日本に正規輸入される可能性はそれなりにあることでしょう。

 いずれにせよ、最終的にそれを決定づけるのは、自動車メーカーの努力でもなく、ましてや政府の方針でもなく、すべては市場のユーザーの判断であることでしょう。

 肝心なのは、日本のEVも中国のEVも分け隔てなく、客観的かつ冷静な視点で理解を深めることなのだと考えています。

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Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明

自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。

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