劣化したエンジンオイルでエンジンが壊れる!? ハイブリッド車は早めにオイル交換すべき理由
クルマのエンジンオイルは定期的に交換することが推奨されていますが、そもそもエンジンオイルにはどのような役割があるのでしょうか。エンジンオイルの役割や種類、交換のタイミングなどを整備のプロに聞いてみました。
エンジンを円滑に作動させるためにエンジンオイルは欠かせない
クルマの電動化が進みつつあるものの、まだまだエンジンを搭載したクルマが主流であり、そのためエンジンオイルも必要不可欠。
近年は交換推奨サイクルが長くなっているとはいえ、エンジンオイルは定期的な交換が必要です。
そもそも、エンジンオイルはどのような役割を果たしているのでしょうか。
エンジンオイルは内燃機関であるエンジンにとって欠かせないもので、人間の体で例えると、エンジンが心臓だとしたらオイルは血液だといわれています。
血液の流れが悪ければ心臓の調子が狂うわけで、それくらいエンジン搭載車にとってエンジンオイルはなくてはならないものであり、気を付ける必要があるということです。
ガソリン車やディーゼル車のエンジンは金属部品の集合体で、内部に設置されたシリンダ内で燃料を燃やし、発生する燃焼ガスによってピストンを動かす力を駆動力に変換しています。
精密な構造で作動しており、エンジンオイルは金属同士のパーツが擦れたりぶつかったりという直接的な接触をカバーし、密閉性を高めつつ円滑に作動させる役割を担っています。
そのほかにもエンジンオイルには、金属部品が作動して発生する摩擦熱と燃焼室で燃料が燃えるときに発生する熱を吸収し放熱させる効果や、エンジン内部に残った汚れを取り除く役割もあります。
これも心臓に新しい酸素や栄養素を取り込み、二酸化炭素を排出させている血液と一緒。また運動や病気などで発熱した場合も血液によって運ばれた熱を人間はさまざまな箇所から放出することで平熱を維持しているわけですが、エンジンオイルはそれと同じ役割の冷却機能をも担っています。
唯一違うのは、血液は腎臓で老廃物と体に必要なものを仕分けして尿などに変換することできれいな状態を保ちますが、エンジンオイルを浄化させる装置はなく(オイルフィルターはその一部を担ってはいますが)、外部から定期的な交換が必要であるということです。
なお、オイルは経年でも劣化や酸化するので、あまり乗っていないクルマであってもエンジンオイルを交換する必要があるのです。
そんな重要な役割を担うエンジンオイルですが、交換時期を過ぎても汚れたままの状態で使い続けていたらどうなるのでしょうか。ベテラン整備士 Tさんに聞いてみました。
「エンジンを始動させると、燃焼室内に少しずつスラッジと呼ばれる汚れ(燃えカス)が発生します。エンジンオイルにはこのスラッジを吸着させることで燃焼室内に汚れを蓄積させない効果があります。エンジンオイルが真っ黒になるのはこの汚れのせいです」
このスラッジと呼ばれる粘着性の高い汚れをエンジンオイルがある程度吸着し、オイルフィルターでろ過しています。
しかしフィルターが目詰まりするとエンジンオイルが汚れたまま潤滑してしまい、ピストンリング下のオイルリングに蓄積、やがては不完全燃焼を起こすといいます。
「潤滑機能が衰えるとエンジン内部の金属が摩耗して燃焼室の機密性が下がり、その隙間からエンジンオイルが混入して燃えてしまうのです。
そうなるとオイル量が減少し、さらに潤滑機能やエンジンの冷却機能も下がるという負のスパイラルになってしまいます」(整備士 Tさん)
ここまでくると不完全燃焼によって燃費は当然悪くなり、普段は燃やさないエンジンオイルが燃えるので焦げ臭い匂いがしたり、異音が発生。最終的にはピストンの焼きつきなどでエンジンブローなど重大な故障の原因となってしまうそうです。
※ ※ ※
エンジンオイルの交換時に悩ましいのが「グレード」と呼ばれるエンジンオイルの種類分けです。高額なオイルは性能も良さそうなのはわかるのですが、この違いとは何なのでしょうか。
「エンジン自体の性能も飛躍的に向上しているとはいえ、逆にいえばエンジンオイルにも、潤滑や洗浄、冷却だけでなく密閉性や潤滑効果など求められる性能や効果も増えています。
そのため、ベースオイルにさまざまな添加剤を加え、その成分や性能によって分類されています」(整備士 Tさん)
その性能は、省燃費性や耐熱性、耐摩耗性などを段階に分けたAPI(アメリカ石油協会)規格のグレードが一般的に採用されています。
ガソリンエンジン用では、グレードは添加剤を含まない鉱物系ベースオイルの「SA」から優れた性能を持つ添加剤を加えた「SN」までありますが、2020年5月にはさらに性能を強化した新規格の「SP」が施行され、現在は13段階にも細分化されました。
「API規格のグレードは最新になるほど高性能といわれていますが、どんなクルマにも適合するわけではありません。クルマの年式ならではのエンジンに合うグレードのエンジンオイルを使うのが1番いいと思います」(整備士 Tさん)
なお、ディーゼルエンジン用は「C」で始まるグレードがありますが、さらに排出ガスの浄化装置の有無などによって分かれているので、必ず指定のグレードを遵守しましょう。
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