突然「東京から山口まで!」とタクシー運転手にオーダー! 長距離は儲かる訳ではない事情とは
基本的には、お客さんを乗せれば乗せるほど稼げるのが魅力のタクシー運転手。しかし、常識外れなほど遠い場所への送迎を求められたら、タクシー運転手はどう感じるのでしょうか。実際に都内で営業するタクシー運転手の方に話を聞きました。
突然の「山口までお願いできますか…?」
タクシー運転手といえば、お客さんを乗せて走った距離や時間(賃走)が長ければ長いほど儲かるという、ある意味で夢のある仕事です。
そのため、タクシー運転手にとっては、基本的に長距離を乗るお客さんは歓迎される傾向にあるといわれています。
しかし、路上で手を挙げて乗り込んできたお客さんが、突然あまりに遠い場所への送迎を求めたとしたら、タクシー運転手はどのように感じるのでしょうか。
おもに都内で営業活動をおこなう、タクシー運転手の男性は「山口までお願いできますか?」というお客さんに出会ったことがあるといいます。
このお客さんは、事前に予約などがあったわけではなく、いわゆる「流しの客」だったそうです。
タクシー運転手は、基本的にはタクシー会社に所属する場合と個人で営業する「個人タクシー」のふたつに分かれています。
このタクシー運転手は、タクシー会社に所属するため、本当に目的地が山口県であるのかを確認したうえで、まず事務所に連絡をしたそうです。
また、長距離走行は、労働基準法などの法令に違反する場合があったり、あるいは「相番」と呼ばれる同じ車両を使用して営業する同僚への影響があったりする場合があるため、第一に会社への確認が必要となります。
今回のケースでは、会社の規則などに則り、一度事務所へ戻ったうえでもうひとりの運転手を同乗させるというツードライバー制で山口県を目指すことになりました。
東京から山口までおよそ1000kmに及ぶ道のりを、途中のサービスエリアなどでの食事や休憩をはさみつつ、2人のタクシー運転手とひとりのお客さんで丸一日かけて駆け抜け、ようやく目的地に着いたときには、タクシーのメーターはおよそ40万円という金額になっていました。
しかし「本当に大変だったのはこの後だった」と、このタクシー運転手の男性は話します。なんと、お客さんは料金を払わずに逃げてしまったというのです。
当然、これほどの長距離走行であるため、支払い能力があるかなどを入念にチェックしていたといいますが、山口県にあるそのお客さんの自宅らしき場所に着いた際の、一瞬の隙に逃げられてしまったそうです。
現在であれば、ほとんどのタクシーに車内カメラが設置されているため、こうした悪質な犯行がおこなわれた場合でも後に検挙へと至る可能性が高いですが、この事件が起こった当時は泣き寝入りするしかなかったようです。
昭和末期に読んだタクシー業界のルポで、新宿駅から西口ホテル街のような1メーター+3〜4回加算の高回転営業が疲労度・収益性を考えると最も仕事がしやすい、と回答した個人タクシーがあったと記憶。