トヨタ「ランクル」2022年もダカールラリー参戦決定! 市販車クラス9連覇を狙うTLCとは
ランドクルーザー300系の開発にフィードバック
ダカール・ラリーへの28回目の挑戦に準備をスタートさせた「チームランドクルーザー・トヨタオートボデー(以下TLC)」。チームのエースドライバーである三浦昂選手、そしてチームを率いる角谷裕司監督ですが、じつはトヨタ車体の社員なんだとか。
ともに『総務部 広報室 ダカールラリー推進グループ』という部署に所属しています。そして本多篤チーム代表もまた、トヨタ車体で領域長を務める社員です。
ただしメンバー構成は同社社員のみならず、福岡トヨタ自動車のメカニックや欧州のラリーメカニック、プロのドライバー、ナビゲーターなどが参加するグローバルチームです。トヨタ車体はアラコから受け継ぐ形で、2005年からダカール・ラリーに参戦。自らが生産したランドクルーザー100系と200系で、すでに14回もクラス優勝を果たしています。
それにしても、トヨタ車体が長年にわたって、ダカール・ラリーに参戦し続ける意義とは何なのでしょうか。ドライバーの三浦選手は、目的の一つは社員のモチベーションを高めることだといいます。
「ランドクルーザーはほとんどが輸出向けになるのですが、生産ラインにいる社員一人一人が、世界の過酷な状況で使われているシーンをイメージできるかというと、難しいと思うんですね。でも、同じ会社の社員がラリーに出て、その体験談を話し、クルマを見せると“こんなになるの!?”ということになるんです。“だったらちゃんと作らなきゃ”とか、“俺たちのクルマで世界一を取るんだ”という感覚を共有し、もっといいランクルづくりへのチャレンジに繋げたいと思っています」
もちろん、ランドクルーザーの信頼性、耐久性、悪路走破性の高さを自らが実証するということも主眼に含まれています。さらには、世界の舞台に挑戦する会社を若年層に知ってもらい、この会社で働いてみたいというリクルーティングの一環でもあるようです。
ただ、それだけはないと三浦選手は付け加えます。
「自分としてはモータースポーツをきちんとビジネスにしたいと思っています。だからこそ、ランドクルーザーにその経験をフィードバックしたいとか、売るという点ではこのモデルの本当の魅力をお客さまにどのように伝えられるかとか、そういうビジネスでの貢献を意識するようにしています」
そのビジネス化の試みは、どのようなシーンで具現化しているのでしょうか。
「ひとつの成功事例が、ランドクルーザー300系です。
クロスカントリーラリーで起こる事象というのは、開発レベルで考えれば一般的な使用条件を超えてしまっているんですね。“ダカール・ラリーでこうなりました”と伝えても、開発側から“それはそうでしょう”といわれてしまいます。だから自分がドライバーなった時に、将来の開発を見据えるような長いスパンで考えなければダメだなと。この事象はラリーだけの話だけど、こうすればお客さまがラクに運転するのに繋がりますよねと、ランクル300系の開発で初めてコミュニケーションが取れるようになりました」。
たとえば、新開発のプラットフォームにより、ランクル300系のリアサスペンションのレイアウトは200系から大きく変更されています。リアのダンパーが従来型よりも起き気味に装着されており、より適正化されたジオメトリーと、トラベル量の拡大が実現されました。そしてこの構造の変更は、ダカール・ラリーからの経験がフィードバックされていると三浦さんは語ります。
「ランクル200系に乗っていて、リアサスペンションに限界を感じていました。波打っているような路面をハイスピードで走っていると、当然クルマは暴れ始めます。そうすると、リアのストローク量が足りないため、お尻が跳ね始めて、やがては前転してしまうんですね。そこでスピード限界が決まってしまいます。
これを何とかすれば、もっと速く走れるし、お客さま目線だと“ラクに運転できる”ということにつながると思うんです。その結果、生まれたのがランクル300系のリアサスというわけです」
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