新型「ゴルフ」が救世主になるか? VWが輸入車1位を奪還するのに不可欠なこととは
新型ゴルフの好調な販売に期待 今後の課題は?
その意味で注目されるのが、2021年6月に国内投入された8代目「ゴルフ」です。ディーゼルはありませんが、VWの国内販売にとって救世主になるかが注目されています。
8代目ゴルフの売れ行きを販売店に尋ねると、以下のように返答されました。
「8代目ゴルフは欧州では2019年に発売されています。日本への導入は歴代モデルと比較してもかなり遅れました。
それでも新型ゴルフは、マイルドハイブリッドを採用して安全装備も進化させたので、トヨタ『プリウス』など日本車からの乗り替えも多いです。8代目ゴルフは、好調な販売を見込めるでしょう。
ただし日本市場への割り当て台数が少ないのは困ります。いまは在庫車も減り、本国にオーダーすると約半年は待たされます。
またワゴンの『ゴルフヴァリアント』は、遅れることなく2021年7月に日本仕様を発売しましたが、今後はこの納期も課題になります」
8代目ゴルフの評判は良好です。1.5リッター直列4気筒ターボの価格は370万円以上(消費税込、以下同様)ですが、1リッター直列3気筒ターボは、「eTSIアクティブ」を312万5000円に抑えました。
しかもeTSIアクティブにオプション設定される「テクノロジーパッケージ」は、10品目の安全装備を加えて価格は20万9000円です。eTSIアクティブ+テクノロジーパッケージの組み合わせは買い得だといえます。
またゴルフヴァリアントは、5ドアハッチバックのゴルフに比べてホイールベース(前輪と後輪の間隔)が50mm長く、後席の足元空間を広げました。
従来のゴルフヴァリアントはゴルフの荷室のみを拡大した仕様でしたが、新型は居住性も向上させています。
この背景には、VWのワゴンとしては海外ではパサートの人気が圧倒的に高く、低迷しているゴルフヴァリアントの付加価値を高めた事情もあります。
新型ゴルフはヴァリアントを含めて商品力が高いですが、今後のVWはゴルフを原動力に売れ行きを伸ばし、輸入車販売の1位に復活できるのでしょうか。
可能性はありますが、解決すべき課題も多いです。まずはゴルフを筆頭にした納期です。前述のように納車に半年もかかってしまうと売れ行きも伸びません。
また、メルセデス・ベンツを超えるには、車種の選択肢を増やす必要もあります。
現在のメルセデス・ベンツは、日本で約16車種を販売。主要車種だけでも、A/B/C/E/Sクラスがあり、SUVも幅広く用意されます。
一方、VWは8車種ほどです。メルセデス・ベンツは車種の選択肢を急増させて売れ行きも伸ばしましたが、VWでは小型の「up!」などを廃止しており、今はゴルフ以外に「ポロ」SUVの「Tクロス」と「Tロック」が日本の販売を支えている状況で、これだけでは弱いといわざるを得ません。
VWがこれから売れ行きを伸ばすには、日本のユーザーに好まれる車種を充実させて、なおかつ納期を短くすることが不可欠です。
ディーゼルの不正問題に際して、VW本社が「日本ではディーゼルを売っていないのに、VWの販売を半減させる理由が分からない」とコメントしているようでは、1位を奪回するのは難しいかも知れません。
クルマの売れ行きを伸ばすには、輸入車、日本車を問わず、その市場に本気で取り組むことが必要です。
いまのメルセデス・ベンツは日本市場にも真剣に取り組み、輸入車の販売1位になったことは事実です。今後のVWに期待しています。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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