なぜトヨタ「アルヴェル」に10倍の格差が生じる? 国産車の6割が不人気車となる3つの理由

アルファード人気に押されるヴェルファイア 現状は?

 日産もホンダに似ています。月別の販売データを見ると、国内で新車販売される日産車の40%前後を軽自動車が占めます。いまの日産は、軽自動車の「ルークス」「デイズ」、コンパクトカーの「ノート」、ミニバンの「セレナ」が売れ筋です。

 2020年12月にフルモデルチェンジしたノートは日産にとって重要なモデルとなりますが、この新型はコスト低減の目的もあってガソリン車を廃止し、ハイブリッドの「e-POWER」のみとなりました。

グレードが大幅に縮小されたトヨタ「ヴェルファイア」
グレードが大幅に縮小されたトヨタ「ヴェルファイア」

 そこで、高級モデルとして「ノートオーラ」を加えた経緯もあります。ノートオーラの価格は、以前のガソリン車に比べて大幅に高いです。従ってガソリン車を削ってノートオーラに変更すれば、メーカーや販売店にとっては粗利が増えるのです。

 ホンダや日産は、2010年までに系列を撤廃して全店が全車を売る体制に変わり、人気車種と不人気車種の販売格差が生じました。

 その点トヨタはいまでも4系列を保っていますが(東京など一部地域では撤廃)、2020年5月以降は全店が全車を扱う体制に移行しています。

 全店が全車を販売すると実質的には系列を撤廃したのと同じことになり、販売格差も急速に拡大しました。

 もっとも顕著なのは、高級ミニバンの姉妹車「アルファード/ヴェルファイア」でしょう。2015年に現行型にフルモデルチェンジしたときは、ヴェルファイアが好調に売れていました。それが2017年に実施されたマイナーチェンジでアルファードのフロントマスクが派手になり、販売順位も逆転しています。

 この販売格差が、全店で全車を扱う体制になるとさらに拡大していきます。両車は基本的に同じクルマなのに、2020年10月以降はアルファードの月販台数が1万台以上、ヴェルファイアは1000台少々と大差が生じました。その結果、2021年4月の一部改良で、ヴェルファイアは特別仕様車を残してほかのグレードを廃止しています。

 トヨタ店では「いままでは専売車種だった『クラウン』を重点的に販売しましたが、2020年5月以降はトヨペット店が扱っていたアルファードや『ハリアー』も販売しています。そこでクラウンからアルファードやハリアーに乗り替えるお客さまも増えています」といいます。

 ネッツ店からは「ヴェルファイアのお客さまが、フロントマスクの好みに応じてアルファードを選ぶこともあります」という話が聞かれます。

 トヨタのミドルサイズミニバン「ヴォクシー/ノア/エスクァイア」の3姉妹車も販売格差が激しいモデルです。

 2021年の1か月の売れ行きを見ると、ヴォクシーが約6800台、ノアは約3900台、エスクァイアは大幅に減って約1300台です。

 もともとヴォクシーはネッツ店、ノアはカローラ店の取り扱い車種だったこともあり、従来型からの乗り替え需要もあります。その点でトヨタ店とトヨペット店が扱うエスクァイアは現行型が初代モデルなので、従来型からの乗り替えはありません。

 しかもエスクァイアには、エアロパーツを装着したグレードも用意されていません。標準ボディということもあり、販売面で不利になりました。

※ ※ ※

 クルマが生活のツールになると、アルファードのような高価格車を含めて、実用性の高いクルマが求められます。そして優れた商品は多くのユーザーの共感を呼ぶので、特定の車種に人気が集中します。

 全店が全車を扱う販売体制は特定の車種だけがよく売られる傾向を一気に加速させ、この状況が長く続くとホンダのように車種数を減らすことにならざるを得ません。

 今後は環境性能の向上を目的とした電動化や自動運転に向けた運転支援装置など、先進技術に向けた投資も増えるため、車種の削減はますます加速しそうです。

 販売台数がさほど多くない個性的な高性能スポーツモデルやラージサイズの上級セダンなどは、いつ販売が終了するかわかりません。このようなモデルが欲しい人は、早めに購入したほうが良いでしょう。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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コメント

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7件のコメント

  1. 配信停止をお願い申し上げます。

  2. ヴェルファイアはさっさとタンクみたいに
    アルファード内のグレードに統合した方がいい

    あとレクサスLMを日本導入したほうがいい

  3. ネットで情報が拡散する今の社会において、
    注目されるか否かで人気不人気の格差が広がってしまうのも要因でしょう。
    車を買うのにそれほどこだわりが無いのならばふつうは無難に、
    予算内において巷で目立つ人気車で気に入ったのを選ぶわけで、
    売れてない車など忘れ去られた存在で、
    思い浮かべ探そうともしないのだから、
    それに販売店側もそれをわざわざ不人気車をお勧めしないし
    より一層販売格差が出るというものでしょう。

    ただし、
    あえていうならば売れていない車がダメな車とは限らない。
    むしろ定番の人気車より個性的で優れたものだって結構ある。
    数百万も出してあえて買うものなんだから
    店頭の看板商品を無難に選ぶのではなく
    ダイヤの原石を掘り当てて見つけ出す位のきもちで
    自分に合った車を探す手間をかけ選んだ方がより愛着も沸くし幸福になれると思うよ。

  4. 元々からエスクァイアは売れて無いというか立ち位置が微妙なんだよね、
    トヨペット店の乗り換え需要において
    アルファードでは大きすぎるという顧客向けの補完で設定されたんで、
    ノア/ヴォクシーより顧客年齢高めがターゲットユーザーと見込み
    5ナンバー幅で上級仕立てでエアロなしという縛りがある。
    そこらへん緩和してもっとミニアルファード調に派手にした改良すれば大化けする可能性もあるだけに
    このまま消滅させるのももったいないと思う。

  5. 今回の記事では自動車業界の問題点の指摘しか有りませんでしたが、売れる車に偏りが有るのは、日本の文化から考えた方が良いと思います。

    車を買うのは、お父さんですが、車を選ぶのは家族の意見が大いに反映されます。
    特にお母さんの意見は絶大だと思います。

    今のお母さん世代といえば、ルーズソックスやアムラーなど周りと同じファッションによって安心を得てきた世代です。
    これは、制服で子供の個性を消し去る日本の文化によるもので、致し方無い事ではありますが、車選びにも周りと同じ車を選ぶ事で安心を得ていると思います。
    数年前、某マンションの駐車場がセレナだらけで恐怖すら感じました。
    バブル期には、六本木のカローラと呼ばれたBMWでしたが、これもまた然りです。

    今の若い世代は、徹底した合理主義なので、今後は無駄の無い車に人気が出るかも知れません。
    軽自動車が売れてるのも頷けるのではないでしょうか?
    NV200やプロボックスなどの4ナンバー車を自家用車として使用するのが流行るかも知れませんね。

  6. トヨタ車はハードは壊れにくくて良いものの、デザインが派手すぎてアジア臭を感じてしまいます。
    もっと機能美を意識したデザインにしてほしいです。トヨタ車の中では未だにアルテッツァとエスティマのデザインがずば抜けて秀逸で、それ以外は残念に感じてしまいます。

  7. ヴェルのELZ乗ってるけど、被らんから俺は気に入ってる(笑)アルはめちゃくちゃ見るなぁ。観光地だからレンタカーもアル多いね。

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