軽自動車は維持費が安いってホント? 小型車との差は年間3万円!? お得なのはどっち?

事故率が自賠責保険の保険料を左右する!?

 自賠責保険料は、軽自動車も小型/普通車もいまはほぼ同額です。2021年4月に自賠責保険料は値下げされましたが、その下がり方が軽自動車よりも小型/普通車のほうが大きかったためです。

 自賠責保険は社会政策の性格を備えるので、保険料をなるべく安く抑えることが法令で規定されています。

軽の自賠責保険は小型車とほぼ同じ
軽の自賠責保険は小型車とほぼ同じ

 利益や損失が生じないようにバランスを取る必要があり、これまでに値上げと値下げを繰り返してきました。

 値上げして保険料を溜めたら、次は値下げして吐き出す。これを繰り返しながら、保険料収入と保険金支出を均衡させるのです。

 自賠責保険も一種の商品なので、値上げと値下げを意図的に繰り返すのは不親切ともいえますが、いまのところこの仕組みになっています。

 ただし2020年度上半期は、コロナ禍によって人の移動が減少したことで事故が減り、2021年4月の改訂は2年連続の値下げになりました。

 なお軽自動車の自賠責保険料は税金と違い、小型/普通車に比べて制度的に安く抑えているわけではありません。保険料収入と保険金支出のバランスに基づいて安くなっているだけです。

 そのために今の軽自動車と小型/普通車を比べると、自賠責保険料の差額が37か月契約でわずか440円に縮まりました。

 20年前の2001年頃の37か月分では、軽自動車は現在と同等の2万7550円でしたが、小型/普通車は3万8450円に達するなど、いまより1万円以上高かったのです。

 近年の小型/普通車は安全装備の充実などによって事故が減り、保険金支出が下がって自賠責保険料も安くなりましたが、これに比べて軽自動車は状況があまり好転していません。

 今後、小型/普通車の保険金支出がさらに減って軽自動車は横這いだと、自賠責保険料が逆転する可能性もあります。

 そのほかの維持費を見ると、N-BOXとフィットでは、あまり差がありません。WLTCモード燃費も同程度なので、ガソリン代もそれほど違いません。

 3年間の税金や維持費の合計は、N-BOXカスタムLが37万9570円、フィット 1.3ホームは46万8510円になり、差額は8万8940円です。このうちの5万9100円は、軽自動車税と自動車税の差額によるものです。

 税金や維持費の合計額を1年当たりの差額で見ると約3万円です。この金額をどのように捉えるかで、軽自動車とコンパクトカーの損得勘定も違ってきます。

 クルマを1世帯に1台だけ所有する場合は「年額3万円の違いならば小型車を選ぶ」と判断するかもしれません。

 しかし公共の交通機関が充実していない地域に住んでいて、1人に1台の割合でクルマを所有する世帯はどうでしょうか。

 1世帯に4台のクルマがあると、1台当たり年額3万円の違いが12万円に拡大します。そうなると軽自動車の安さが際立ちます。

 このような事情から、長野県や鳥取県、佐賀県、島根県、福井県では、10世帯当たり10台を超える軽自動車が所有されています。逆に東京都では10世帯当たり1台を少し上まわる程度です。

 軽自動車は、公共交通機関を利用しにくい地域では、生活に不可欠な移動手段です。従って軽自動車の増税は許されませんが、その実態は、政治や行政の中心地からは見えないようです。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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