なぜ「軽SUV」は販売上位に入らない? 「軽スーパーハイトワゴン」に敵わない訳
昨今はSUVがブームとなっているのと同時に軽自動車も好調に売れています。そうなると、「軽×SUV」も人気を得ていると思われますが、必ずしもそうではないようです。
空前のSUVブームでも「軽」となると事情が違う!?
最近は軽自動車の売れ行きが好調です。2020年度(2020年4月から2021年3月)に国内で販売さられた新車のうち、38%を軽自動車が占めました。直近の2021年4月に限定すると軽自動車の比率は40%に達します。
そのために2021年4月のメーカー別販売台数は、1位がトヨタ、2位がスズキ、3位がダイハツ、4位がホンダ、5位が日産となっています。軽自動車を中心とするスズキとダイハツが2位と3位に入るのは、以前は考えられなかったことです。
その一方で、カテゴリー別に見るとSUVの販売も伸びています。SUVはワイルドな外観で存在感があり、それでいてボディの基本スタイルはワゴンなので居住性や積載性も優れています。
SUVの売れ行きを見ると、コンパクトなトヨタ「ヤリスクロス」や「ライズ」、高級モデルのトヨタ「ハリアー」などが販売ランキングの上位に入ります。新車として売られる小型/普通乗用車のうち、約25%をSUVが占めています。
そうなると、軽自動車のSUVモデルは販売が好調だと思われるでしょう。しかし、「軽×SUV」をウリにしたスズキ「ハスラー」やダイハツ「タフト」は、軽自動車販売ランキングの上位には入りません。
2020年度における軽自動車販売ランキングは、1位がホンダ「N-BOX」、2位がスズキ「スペーシア」、3位がダイハツ「タント」、4位がダイハツ「ムーヴ」、5位が日産「ルークス」、6位がスズキ ハスラーと続きます。ダイハツ タフトは12位です。
ただしこの販売ランキングには注釈が必要です。全国軽自動車協会連合会が発表するデータでは、5位のムーヴに派生車の「ムーヴキャンバス」の台数も含まれることです。
ムーヴキャンバスは後席側のドアがスライド式で、車名には共通性があってもクルマの造りは異なります。そしてムーヴの販売うち、ムーヴキャンバスの割合は約60%と多いです。
2020年度にムーヴは10万1183台が届け出されましたが、約6万台はムーヴキャンバスで、残りの約4万台がムーヴになります。ムーヴの販売実績を分割すると、届け出台数は一気に下がり、ムーヴキャンバスがタフトと同程度でムーヴはさらに下回ります。
つまり実質的な軽自動車の販売トップ5は、N-BOX、スペーシア、タント、ルークス、ハスラーという順になります。
このなかで、1位のN-BOXから4位のルークスまでは、すべて全高が1700mmを超える、スライドドアを備えたスーパーハイトワゴンです。スーパーハイトワゴンが軽乗用車の販売総数に占める割合は約50%と多く、このタイプを除いた軽自動車ではハスラーが最上位に食い込んでいます。
なぜここまでスーパーハイトワゴンの人気が高まり、ハスラーは実質5位なのでしょうか。スズキの販売店に尋ねました。
「スペーシアは軽自動車でありながら、車内の広さからシートアレンジ、スライドドアまで、さまざまな機能を高めました。しかもグレードが豊富で、標準ボディとエアロパーツを装着した『スペーシアカスタム』、SUV風の『スペーシアギア』をそろえます。
いまは軽自動車のSUVを希望するお客さまが多く、使い方に応じてスペーシアギアとハスラーを選ばれています」
スペーシアにSUV風のギアが用意されるため、ハスラーがユーザーを奪われている面もあるようです。確かに汚れを落としやすい平らな荷室など、スペーシアとハスラーには共通点もあります。
ディーラーオプションについても、両車とも車中泊を楽しめるクッションやプライバシーシェードを用意するなど、全高や車内の広さは異なりますが、商品の性格は似ているのです。
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