なぜホンダは2世代連続ヒットが難しい? 新型ヴェゼルは「ホンダのジンクス」を破れるか?

発売されたばかりの2代目ヴェゼルは大丈夫?

 ホンダの2代目、3代目モデルが売れ行きを下げた背景には、複数の理由が考えられます。

 まず先に挙げた天井を低くしたことです。ユーザーは車内の広さもコストに置き換えて考えており、狭くなると割高な印象が強まって外観の存在感も薄れます。

スポーティになった3代目「フィット」
スポーティになった3代目「フィット」

 ふたつ目の理由は、ホンダの場合、コンセプトやデザインを踏襲する変化の乏しいフルモデルチェンジを嫌う傾向があることです。

 前述の3代目オデッセイやステップワゴンは、天井を下げるだけでなくフロントマスクも大幅に変えていて、これが裏目に出て売れ行きを下げています。

「フィット」も初代と2代目は一般的な形状でしたが、3代目の先代型はサイドウインドウの下端を後ろに向けて大きく持ち上げ、フロントマスクも含めてスポーティな雰囲気を表現。しかしこれが災いして売れ行きは伸び悩みました。

 これら一連のフルモデルチェンジには、いずれも「従来型とは変えなければならない」という意図が感じられ、少々無理のあるフルモデルチェンジになっているといえます。

 このほか2代目や3代目で売れ行きが下がる背景には、ほかのホンダの新型車投入も絡んでいます。

 ホンダの場合、堅調に売れている車種があっても、別の新型車が登場すると販売力を奪われて売れ行きを下げてしまうのです。

 例えば1994年に初代オデッセイが発売されて好調に売れても、1996年に初代ステップワゴンが登場すると、オデッセイの好調に少し陰りが生じました。

 そして2001年に初代フィットが発売され、翌年に国内販売の総合1位になると、ミニバンなどから乗り替えるダウンサイジングの流れが生まれます。そうなるとフィットにステップワゴンやオデッセイの顧客が奪われて売れ行きを下げ始めたのです。

 この後フィットは息の長い人気を保ちましたが、2011年に先代となる初代「N-BOX」が発売されると、ダウンサイジングがさらに進んでフィットのユーザーも奪われ始めました。

 しかも初代N-BOXの発売から2年後に3代目フィットにフルモデルチェンジしましたが、外観が不人気となってしまったことから、売れ行きを一層下げることになってしまいました。

 このようにホンダ車の2代目、3代目が売れない背景には、「従来型とは変えなければならない」という無理のあるフルモデルチェンジであることと、そこに追い打ちを掛けるように登場する新しいホンダ車の存在があります。

 ホンダでは、常に好調に売れるスター的な車種があり、それが頻繁に入れ替わり、そのためて人気が長続きしないのです。

 しかし最近は、この流れが変わってきました。全高を下げるような思い切ったフルモデルチェンジは控えるようになったのです。

 例えば、2021年4月23日に発売された新型となる2代目「ヴェゼル」は全高を20mm下げましたが、これは外観のバランスを整える補正の範囲に収まっています。むしろフロントマスクを直立させたことで、先代型よりも存在感が増して大きく見えます。

 新型ヴェゼルについて、販売店に顧客の反応を聞いてみました。

「先代型のお客さまも含めて、受注は好調に推移しています。いまはSUVが人気のカテゴリなので、子育てを終えたお客さまがミニバンのステップワゴンやオデッセイから新型ヴェゼルに乗り替えることも多いです。

 新型ヴェゼルはハイブリッドシステムを刷新した効果もあって受注は順調です。2021年4月下旬に契約しても、納期は早くて2021年8月。遅ければ2022年に入ることも考えられます」

 新型ヴェゼルは発売直後であるため、今後の正確な販売動向はこれから明らかになると思いますが、ハイブリッドシステムや安全装備の性能も向上したから暫くは安定的に売れるでしょう。

 むしろいままでのパターンから考えて心配なのは、次期型の3代目ヴェゼルです。初代と現行型の2代目が空間効率の優れたコンパクトSUVなので、この路線を変えようとすると、裏目に出て売れ行きを下げる心配があります。

ホンダ・ヴェゼル のカタログ情報を見る

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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5件のコメント

  1. えっ!既に予約殺到で今年度1番売れると思いますよ。私も買います

  2. 新型ヴェゼルはすごくかっこいいと思う
    ほしいけど金がない😢

  3. 二代目で売り上げが芳しくなくなるのは、売れてる車をフルモデルチェンジでスタイルの大幅変更をするのが大きな要因じゃないかな。例えばフィットは初代から二代目にかけて正常進化させて良くなったけど三代目の大幅変更で下降線、四代目の現行型も期待ほどには売れてないみたいだしね。昔ジャガーの誰かさんが言ってた「性能的には平凡でも格好良ければ売れる」てのがホントのとこだと思うよ。その辺をホンダが理解すれば内容に見合うデザインを考えるようになるかもね。

  4. 新型ヴェゼル、実際には売れてないみたいですね。もうは5月の時点で、販売台数に陰りがみえています。売れてる詐欺もそうそう続くものではないですし、今年一年が山場となりそうです。

  5. 前評判通り、やはり売れない新型ヴェゼル。見た目のかっこ悪さが一番の原因なのだろうか。先代ヴェゼルのように評判がよく売れている車種のフルモデルチェンジは、先代をうまく継承しないと既存ファンが逃げる。

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