「ハマーEV」にジープ「マグネトー」 アメリカン四駆が続々と電動化する狙いとは

大型のクルマならば大きなバッテリーを搭載しやすい

 そうした背景があるなかで、環境に配慮したピックアップトラックや大型SUVをリリースするとなれば、「エンジン車ではなくEVにする」のは、ごく当然の方向性ではないだろうか。

ジープ・ラングラーベースのフルEVコンセプト「MAGNETO(マグネトー)」
ジープ・ラングラーベースのフルEVコンセプト「MAGNETO(マグネトー)」

 水素を使う燃料電池車(FCV)は、まだインフラも整っていない。またハイブリッド車(HV)では、環境問題の解決策としてはインパクトに欠ける。

 しかし、EVであれば、走行中のCO2排出はゼロでアピール力もある。またテスラという成功者もいる。バッテリーの価格などの問題はあるものの、アメリカ市場に限っていえば、他の選択肢よりも現実味があるのだ。

 また、SUVとモーターの組み合わせは、メリットも多い。

 まず車体が大きいため、大容量のバッテリーを搭載しやすい。さらにモーターは低回転域で大トルクを出しやすいので、重いクルマを走らせるのに向いている。さらにトルク制御も緻密にしやすいので、悪路を走るときの4WD制御のポテンシャルも高い。左右輪に別々のモーターを備え付ければ、面倒なデフの制御もなしに、1輪ごとに最適なトルクをかけることができる。

 そのためハマーEVなどでは、3つのモーターを搭載するグレードも用意されている。野性味溢れるオフローダーは、意外にもEVと親和性が高いのだ。

 しかし、ピックアップトラックや大型SUVのEVにはデメリットもある。それは効率だ。

 車体が大きく重いため、動くのに大きなエネルギーが必要になる。つまり、より大きなバッテリーを搭載しなければならない。そして、バッテリーの量を増やせば、また重量は増大する。つまり負のスパイラルに陥る。もちろんバッテリーを数多く積むほど価格も高くなる。

 そのため、車両価格が1000万円以上するハマーEVでも、航続距離は300マイル(約480km)と、半額以下の日産「リーフ」よりも若干劣ってしまうのだ。

 またバッテリーを大量に積めば積むほど、充電にも時間がかかる。それをクリアするために急速充電できる直流電圧を高めるという方策もあるが、それに対応する高電圧の充電設備が必要になるし、供給する電力も大量に必要になる。クルマ単体だけでなく、国や地方の電気政策にまで関わる問題となるのだ。

テスラ「サイバートラック」
テスラ「サイバートラック」

 とはいえ、巨大なピックアップトラックや大型SUVを求める人が効率云々を重視するとは、とても思えないという側面もある。

 燃費、いや、電費なんか関係ない! というスタンスであれば、ピックアップトラックEVや大型SUVのEVは、「カッコ良く」「パワフル」「悪路に強く」、しかも「環境に配慮した今どき」の存在に見えるのであろう。

 バイデン政権下でカーボンニュートラルが脚光を浴びるのに合わせて、アメリカ市場におけるEVの注目度も高まることだろう。ピックアップトラックや大型SUVのEV化は、これで終わることなく、これからも続々とニューモデルが登場するのではないだろうか。

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Writer: 鈴木ケンイチ

1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するように、日々努力している。最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。

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