佐川の新EVは「中国車」じゃない? 日本発のファブレス方式でEV市場の覇権を狙う

ヤマト運輸や日本郵便もEV導入…でも雲行きが怪しい?

 ところで、宅配用途で使われるEVといえばヤマト運輸も2020年から導入しています。

 ヤマト運輸が採用した車種はドイツの物流会社DHLの子会社であるストリートスクーター社が開発した車両で、首都圏の営業所を中心に2021年3月までに累計493台が登録されています。

 しかし、1台800万円以上とされる車両代をはじめ、日本特有の気候条件などによって頻発する故障や短い航続距離、使い勝手の悪さも含めて同車を使う配達員から聞こえてくる声もあまり芳しいものではないようです。

報道陣に公開された軽EV(プロトタイプ)の走行模様(提供:佐川急便)
報道陣に公開された軽EV(プロトタイプ)の走行模様(提供:佐川急便)

 日本郵便も佐川急便と同じく、軽自動車の配達車両にEVを採用しました。車種は三菱「MINICAB-MiEV」で、2020年度末までに約1200台を導入してきましたが、こちらも1台243万円という高い価格、そして何より三菱自体が生産を2021年3月で終えたということもあり、今後の展開にはあまり期待はできないでしょう。

 ヤマトや日本郵便のEVに対し、佐川のEVはドライバーの声を大事にした日本主導での開発・設計、そして中国で生産することで実現できた低価格というふたつの点において優位性を確保しています。

 今後の予定では、2021年中に実証実験や走行テスト、内外装の仕様を決定し2021年9月には合意の締結と量産の開始をおこない、2022年9月より順次営業所へ納入していくこととなっています。

 プロトタイプが公開された現時点で各界に衝撃を与えたこのEVですが、今後の展開から目が離せません。

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Writer: 中国車研究家 加藤ヒロト

下関生まれ、横浜在住。2017年に初めて訪中した際に中国車の面白さに感動、情報を集めるうちに自ら発信するようになる。現在は慶應義塾大学環境情報学部にて学ぶかたわら、雑誌やウェブへの寄稿のみならず、同人誌「中国自動車ガイドブック」も年2回ほど頒布する。愛車は98年式トヨタ カレン、86年式トヨタ カリーナED、そして並行輸入の13年式MG6 GT。

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