メルセデス新型「Sクラス」はどう進化? 「最善か無か」を具現化するフラッグシップの凄みとは

2021年1月に日本上陸を果たした、7代目となるメルセデス・ベンツ新型「Sクラス」。戦後間もない1951年発売のW187型までそのルーツを遡ることができる、メルセデスブランドを代表する旗艦モデルで、2013年に登場した先代は、世界累計販売台数が50万台を超えたという「もっとも選ばれているラグジュアリーセダン」だが、新型はどのように進化したのだろうか。実車とともに見ていこう。

空気抵抗係数0.22という驚異的な空力ボディ

 メルセデス・ベンツ「Sクラス」は、「最善か無か」というクルマづくりのポリシーを貫き、8年ぶりのフルモデルチェンジを果たした。時代の最先端のモデルとして登場した新型はW223型と呼ばれ、7代目のSクラスになる。

 メルセデス・ベンツを知る人が見れば、Sクラスだとすぐにわかるエクステリアデザインではあるが、じつはすべてが新しくなっている。

メルセデス・ベンツ新型「Sクラス(S400d 4MATIC)」の走り
メルセデス・ベンツ新型「Sクラス(S400d 4MATIC)」の走り

 筆者が注目するのは新型の空気抵抗係数で、Cd=0.22というのは驚異的な値だ。一時代前なら居住性や実用性などを大幅に犠牲にしないと得られない数字を、実用的なセダンのスタイリングで実現できたことが素晴らしい。

 風切り音が低減して静粛性が向上することやハイスピードでの燃費の悪化が防げることなど、ユーザーメリットは大きい。風の流れを細部に渡ってリファインさせた成果だろう。

 ラジエターグリルは、これまでよりも横に大きくなっている。ただし中央付近はフラットなパネルにし、その裏側にはレーダーなどのセンサー類をまとめて備える。グリル自体は大きくなったが、クロームの枠は細くなり、スッキリした先進のイメージに変わった。

 今回のフルモデルチェンジの目玉でもあるハイテクパーツは、デジタルライトと呼ばれるものだ。

 ヘッドライトは片側130万ピクセルのプロジェクションモジュールを瞬時に制御することで、夜間走行では先行車、対向車を眩惑することなく、高い精度で広い範囲を明るく照らすことができる。横から見える3個のブルーのポイントがデジタルライトのアイコンになる。

 ヘッドライトカバー上部には従来のアイブローのようにDRL(デイタイムランニングライト)として光りメルセデスらしさを守っている。

 新しいテールランプは2ピースになった。細かく見ると、テールレンズの中で立体的に見えるのがおもしろい。鮮やかだが眩しくなくライティングをしてくれるLEDコンビネーションランプである。

 エクステリアデザインは角張ったところがなく、丸みを帯びた滑らかな面で構成されているのが特徴だ。Sensual Purity(官能的純粋)という設計思想の下、余計なキャラクターラインやエッジを減らしている。

 とくにサイドはキャラクターラインをなくしウインドウ下端のベルトラインに近づけたキャットウォークラインを設けて、ボディを大きくみせずに軽快なイメージにしている。フェンダー部分は緩やかなカーブで膨らませて幅広いトレッドをカバーしている。完全なセダンであるが、Cピラーの傾斜は大きめになってクーペの流麗さを醸し出している。

 新しいのは、ドアのアウタードアハンドルが格納式になったこと。走行中は格納されてボディはフラッシュサーフェースになり、風切り音を低減することに貢献している。

メルセデス・ベンツ新型「Sクラス」のデジタルライト
メルセデス・ベンツ新型「Sクラス」のデジタルライト

 全長5180mm×全幅1920mm×全高1505mmが標準ボディで、オプションのAMGラインでは5210mm×1930mm×1505mm、ロングは標準ボディより全長が110mm長い5290mm(AMGラインは5320mm)になっている。ホイールベースは、標準ボディの3105mmに対し、ロングは3215mmとちょうど110mm長く、後席レッグスペース用にホイールベースが伸びた。

 標準ボディでもホイールベースがかなり長いから都会での取り回しが心配になるが、リヤアクスルステアリング(4WS)を採用しているので、最小回転半径はなんと5.4m、ロングでも5.5mと非常に小回りが効く。これはEクラスと同じだから、運転に心配はいらない。

 リアアクスルステアリングは60km/h以下は逆位相に最大4.5度、60km/h以上は同位相に最大3度ステアする。本国仕様では最大10度まで逆位相にステアするが、これは自動運転でのバレーサービス用として使われる。

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