ホンダが誇る軽スポーツの2台! 「ビート」と「S660」で納得の共通点とは?
本格的なピュアスポーツカーとして開発された「S660」
ビートの生産を終えてから15年後の2011年、ホンダは株主総会の場で軽スポーツカーの開発をおこなうことを明らかにしました。
そして同年の第42回東京モーターショーにモーターで後輪を駆動し、ボディの一部にカーボンを採用したコンパクトなEVスポーツカー「EV-STER」を出展。
アグレッシブな外観が印象的なコンセプトカーでしたが、実用性をほとんど無視したようなデザインで、「ショー専用で市販化できないのでは」と一部で囁かれました。
しかし、2013年の第43回東京モーターショーでは、EV-STERのデザインをモチーフにした市販型の「S660 CONCEPT(コンセプト)」を出展し、パワーユニットもモーターではなくガソリンエンジンとしたことと、軽自動車規格の枠内に収められたボディサイズから、早期の市販化を望む声が高まります。
そして、2015年に満を持して「S660」が発売されました。
198万円(消費税8%込)からというかなり高額な価格ながら、初期の受注は契約から納車まで半年以上かかる状況を生む人気車となりました。
外観はリアミッドシップを強調するリアカウルがスタイリッシュなフォルムを演出。ルーフはビニール製で上部のみが脱着可能なタルガトップを採用。
歩行者保護の観点からやや厚みがあるフロントフェイスですが、ビートをオマージュしたようなデザインで、後にデビューした2代目NSXにも通じる精悍さが感じられます。
また、ボンネット上やボディサイドには特徴的なプレスラインが採用され、スピード感と力強さを際立たせています。
室内はやはりタイトに設計されており、コクピットはF1をイメージしてデザインされ、センターコンソールはドライバーとパッセンジャーを分離する形状で、あくまでもドライバーが各部の操作を的確におこなえることを重視。
なお、ビートと同様にDIN規格のオーディオを搭載することは想定されておらず、デザインが優先されています。
Dシェイプで各スイッチが設置されたハンドルの奥には、中央にデジタルスピードメーターと、アナログのタコメーターを配置。右側にはセグメント式の燃料計、左側には同じくセグメント式のブースト計があり、その周辺に警告灯がレイアウトされ、視認性は良好です。
搭載されるエンジンは「Nシリーズ」と同じ最高出力64馬力の660cc直列3気筒DOHCターボですが、専用のターボチャージャーによってレスポンスを向上。
アクセルをオフにしたときターボの圧が抜ける「プシュッ」というブローオフバルブ音の音質もチューニングしたといいます。
トランスミッションは軽自動車初で新開発の6速MTとパドルシフト付きのCVTを搭載。とくにこだわって設計された6速MTはスムーズかつカチッとしたシフトフィーリングです。さらにMT車ではエンジンの許容回転数を700rpm上げ、無用なシフトダウンを抑制できる走りが考慮されました。
サスペンションは前後ストラットの4輪独立懸架で、前後にスタビライザーを装備。ブレーキは4輪ディスクが奢られ、タイヤはフロントに165/55R15、リアが195/45R16の異径サイズです。
さらにホンダの軽自動車として初の「アジャイルハンドリングアシスト」を採用。コーナーリングの際に少ないハンドル操作でスムーズな車両の挙動を実現し、まさにピュアスポーツカーにふさわしいハンドリング性能を実現しています。
グレード構成は装備の違いで「α(アルファ)」と「β(ベータ)」があり、あわせて発売を記念した「S660 CONCEPT EDITION」という特別仕様車も設定。その後、2017年には2台の特別仕様車、2018年にはカスタマイズされた「Modulo X」が追加され、2020年にはマイナーチェンジがおこなわれ、内外装の一部意匠変更を実施。
そして、2021年3月12日に生産終了の発表とともに、最後の特別仕様車として「Modulo X Version Z」が発売されました。
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ビートとS660の誕生には24年もの隔たりがあり、リアミッドシップの軽オープンカーということ以外は、性能的にも比べられる土俵には上がりません。
しかし、両車とも開発陣の強いこだわりが詰まっており、軽自動車であることの枠を超えたスポーツカーに仕上がっている点は共通です。
実際にビートの開発に携わったホンダのエンジニアは「ビートは軽自動車ではありません」と断言したほどです。
軽自動車で唯一といっていいピュアスポーツカーであるS660が消えてしまうのは残念ですが、ビートと同様に今後も語りたがれる存在となるでしょう。
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