暗礁に乗り上げた?「アップルカー」 従来の「車」超えて社会を変化させる理由とは
2021年に入り、アップルが開発を進めていると噂される「アップルカー」の量産について、情報が錯綜しています。韓国ヒュンダイグループがアップルとの協議を否定するなどの動きも出ていますが、もし量産化に至ったら社会にどんな影響を与えるのでしょうか。
ヒュンダイグループとの交渉は頓挫した?
「アップルカー」量産について、情報が錯綜しています。

2021年1月、アップルが自動運転EVの量産で韓国ヒュンダイグループと協議しているとアメリカの一部メディアが伝え、世界に衝撃が走りました。
2月に入ると、生産はヒュンダイグループのキアが担当し、製造拠点は2024年から米ジョージア州内の工場となり、アップルの投資額は30億ドル(1ドル105円換算で3150億円)という具体的な数字がどんどん表に出てきました。
ところが2月8日になって、ヒュンダイグループ側がアップルカーに関するアップルとの協議について否定したため、ヒュンダイとキアの株価が一気に下がるという事態に陥りました。
いったいこの話、本当なのか、それとも単なる噂なのか、それともアップルとヒュンダイとの交渉が何らかの事情でもつれているのでしょうか。
事の真相については、今後の各種報道も踏まえて、アップルとヒュンダイの動きを注視していくしかありません。
改めて、アップルが自らのブランドを名乗る量産車ビジネスに参入することで、自動車産業界にどのような影響が及ぶのかを、アップルのこれまでの動きを振り返りながら考えてみたいと思います。
アップルが最初に自動車産業への参入を発表したのは、2013年6月にサンフランシスコで開催された、開発者向け年次イベントWWDC(ザ・アップル・ワールド・ワイド・デベロッパーズ・カンファレンス)でした。
「iOSイン・ザ・カー」という名称で、車載器とiPhoneを連携するアップル独自のシステムです。これは、のちに「CarPlay」として量産されます。
CarPlayの採用をすぐに決めた自動車メーカーは、メルセデス・ベンツ、ホンダ/アキュラ、日産/インフィニティ、ボルボ、GMシボレー、オペル、ジャガー、フェラ―リ、そしてヒュンダイ/キアでした。
このシステムのキモとなったのは、アップルが普及を進めていた音声認識技術のSiri(スピーチ・インタープリテーション・アンド・リコグニション・インターフェイス)です。
2013年6月、筆者(桃田健史)はホンダのシリコンバレーの最前線基地(当時:ホンダ・シリコンバレー・ラボ)を取材し、同所の幹部からホンダとアップルとの協議の流れについて聞きました。
それによると、「ホンダとしては独自に車載器とSiriを連携させるシステム(aha by HarmanでのSiri Eyes Free機能)を2012年に開発しており、そのためアップル側にもiPhone連携を含めたさらなる協議を打診していたが、なかなか話が前進しなったところに、iOSイン・ザ・カーが発表されて、話は一気に進みました」と状況を教えてくれました。
さらに、ホンダとしてグーグルに対してもアンドロイドと車載器との連携の協議を打診していたそうですが、iOSイン・ザ・カー発表直後から、グーグルの動きが急変。アップルへの対抗から、グーグルは「Android Auto」量産へ一気に舵を取りました。
こうして、アップルとグーグルというIT巨頭が相次いで、インフォテインメント(インフォメーションとエンターテインメントの融合)という分野から自動車産業に参入してきたことで、自動車メーカーの間では「軒を貸して母屋を取られる」ような、将来への危機感を抱くようになりました。
実際、グーグルは車載器とアンドロイドフォンとの連携分野に留まらず、インフォテインメントを主体とした車載OSでもシェアを拡大してきました。
また、2019年の独フランクフルトモーターショーと併催されたモビリティ関連イベントでグーグルは講演し「車載におけるアンドロイドの役割を、自動運転などクルマの走行分野にも一気に広げる」と説明しています。
















