暗礁に乗り上げた?「アップルカー」 従来の「車」超えて社会を変化させる理由とは
自動車産業界にとってのアップルの脅威とは?
一方で、アップルはCarPlay以外の分野では、大きな動きがありませんでした。
2010年代中盤から後半にかけて、米国製ミニバンを架装した自動運転EVらしき公道実験車両がシリコンバレー周辺で目撃される機会は増え、ティム・クックCEOは社内コード「プロジェクト・タイタン」の存在を認めたものの、具体的な量産化計画について明らかにすることはこれまで一度もありませんでした。
そうしたなか、2021年に入りアップルのヒュンダイ/キアへのEV生産に関する報道が錯綜しているのです。

では、仮にアップルカーの生産に目途が立つと、自動車産業にとって、またユーザーにとってどのような影響が及ぶのでしょうか。
前述のように自動車メーカーにとっては、車載OSについてiOSとアンドロイドとどう棲み分けるのかが課題です。現実的には、スマホ連携である、CarPlayとAndroid Autoのように、併存することは難しいはずです。
また、より広い視野でのデータ関連ビジネスも重要課題です。
クルマが社会の一部になることで、近年話題となっている、街全体における情報のベースとなる都市OSとの連携について、iOSがどう絡んでくるのか。
現状でスマホ利用者では日本のようにiPhone利用率が高い国が多いなか、車載OSと都市OS連携は自動車産業のみならず、デジタル化社会の実現に向けて行政、公共交通事業、医療の業界としても重要な課題となります。
つまりアップルカーとは単なるテスラ対抗のEVではなく、まさに「走るスマホ」として社会インフラそのものになる可能性があります。
それだけに自動車メーカーも、そしてユーザーも、今後の動向から目が離せないのだと思います。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
















