まさにホンダイズム全開の商用車とは!?

●ホンダ「L700／P700」

　ホンダは1963年に同社初の4輪自動車として、軽トラックの「T360」を発売。エンジンは市販されなかった軽スポーツカーの「スポーツ360」用に開発された360cc直列4気筒DOHCを搭載するなど、常識外れのモデルでした。

　続いてホンダは、同年に初の乗用車である「S500」を発売し、さらに1964年には排気量をアップした「S600」が登場します。

　そして、1965年には「高速時代のライトバン」と称して、S600のエンジンをベースに排気量を700ccへ拡大し、低回転域のトルク不足を補ったエンジンを搭載したライトバンの「L700」を発売。

　L700は52馬力までデチューンされていたとはいえ、当時はスポーツカーでも非常に珍しかったDOHCエンジンを搭載し、日本車初のストラット式サスペンションをフロントに採用するなど、ライトバンにも先進技術を投入するホンダらしさがあふれたクルマでした。

　シャシはモノコックではなくフレーム構造で、テールゲートを備えた3ドアボディとなっていて、兄弟車としてピックアップトラックの「P700」もラインナップ。

　しかし、商用車ではOHVエンジンが主流だったことから、複雑な構造のDOHCエンジンは適しておらず、販売数は極めて少ない状況でした。1966年にはさらに排気量をアップした「L800」と「P800」を発売しましたが、その2年後には生産を終了。

　ホンダはなぜT360にP700にDOHCエンジンを搭載したのかというと、単純にそれしか持っていなかったということでしょう。

●ホンダ「バモスホンダ」

　ホンダはT360の販売が極端に低迷していたことから、1967年に後継車として、乗用車の「N360」から流用した360cc空冷2気筒SOHCエンジンを搭載する軽トラック「TN360」を発売しました。

　TN360の販売は好調で、1970年には派生車となる軽トラック「バモスホンダ」が登場。

　バモスホンダはTN360のシャシをベースに、専用のボディが架装された非常にユニークなデザインのクルマで、一見すると軍用車のようです。

　ボディタイプは基本的なデザインは共通で、2人乗り、4人乗り、4人乗りフル幌の3タイプが設定され、キャビンはキャンバストップのオープンとなっています。

　さらに、パネル状のドアは装備されずパイプ状のものがドアの代わりに装着されているのみで、開放感はオープンカーの比ではありません。

　内装はシートに防水生地が使われ、スピードメーターとコンビネーションメーターは丸型の防水タイプを採用したことで、不意の雨でも慌てずに済む対策が施されるなど、オートバイメーカーならではの装備です。

　バモスホンダは一見するとオフロード車に見えますが、フェローバギィと同じく最低地上高が低いため、悪路走破性は高くなかったと思われます。

　軽トラックとしての使い勝手は良好だったものの、奇抜すぎるデザインで販売面では苦戦し、発売からわずか3年後の1973年に生産を終了。

　ちなみに、特撮ヒーローの「ウルトラマンタロウ」や「ジャンボーグA（エース）」の劇中車として、バモスホンダが使われました。

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　現在、軽トラックを生産しているメーカーは、スズキ、ダイハツ、ホンダの3社ですが、ホンダ「アクティトラック」は2021年6月で生産を終了する予定で、ホンダは軽トラック市場から撤退することになります。

　前述のとおり、ホンダはT360から4輪自動車の製造が始まっており、以来、軽トラックを生産し続けてきました。

　一方、軽トラックの市場規模は1988年をピークに年々減少している状況で、ホンダは新型モデルの開発について断念せざるを得なかったようです。

　ホンダの4輪製造の原点といえる軽トラックが消滅してしまうのは、経営陣も断腸の思いがあるでしょう。しかし、企業の判断としては正しいのかもしれません。