ガソリン車禁止「なぜ曖昧?」 日本はなぜ新車販売終了を「遅くとも~」と発表したのか
クルマの電動化実現には社会システムの見直しが不可欠
一方で、2010年代後半から世界中で一気に広まったのが、ESG投資です。
ESG投資とは、これまでのように財務内容だけではなく、エンバイロンメント(環境)、ソーシャル(社会性)、ガバナンス(企業としての統治)にも重点を置いた投資を指します。
企業としては、ESG投資への配慮が株価に大きく反映されるようになってきました。
今回発表された、国のグリーン成長戦略のなかでも、ESG投資は世界で3000兆円規模あり、日本でもその10分の1程度の資金が大きく動く可能性があるとの認識を示しています。

世界的なESG投資を日本経済に取り込むため、クルマの電動化を加速させるという思惑が見て取れます。
こうした、中長期に渡る電動化の研究開発と、比較的短期での利益確保も念頭に置くESG投資というふたつの分野が併存している状況を、国内で自動車産業に関わる多くの人、そして多くのユーザーが認識していないことが、日本の大きな課題だと思います。
実際、ここ数か月間で開催された新車試乗会など各種の会合やイベント、またオンライン記者会見などで自動車メーカーの開発、営業、広報などの関係者と話す際、ESG投資という言葉自体を知らない人がまだかなりいます。
一方で、各自動車メーカーの役員など幹部と意見交換すると、当然彼らはESG投資の重要性を肌で感じ取っているものの、「投資のペースが少々過剰で、先行きが見えない」という不安な気持ちを口にする人も少なくありません。
このような日本の自動車産業界の現状を鑑みて、政府としては、まずはグリーン成長戦略としての概要を打ち出しました。
今後、日本経済の主力産業である自動車の電動化については、政府は関係各位とのさらに踏み込んだ議論を進めて、日本の進むべき道を見極めていくことになるでしょう。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。






































