およそ1200万円!! ますますプレ値がつくランチア「デルタ・エヴォ」とは?

1180万円の「エヴォルツィオーネII」のコンディションとは?

 1987年から1992年シーズンに至るまで、WRC(世界ラリー選手権)において6年連続コンストラクターズタイトルを獲得するという前人未到の戦果を挙げたほか、スーパーカー的なエッセンスも湛えた独特のセンスの良さもあって、市販ロードカーとしても熱狂的支持を得てきたランチア・デルタHFインテグレアーレ。

 そのファイナルモデルとなったのが、ランチアおよびジョリー・クラブがWRCにおいて有終の美を飾った1992年末に、稀代の名作デルタHFインテグラーレのファイナルモデルとして誕生した、通称「エヴォルツィオーネII」である。

 すでにWRC選手権からの撤退を決したのちにデビューしたせいか、前年のHFインテグラーレ「エヴォルツィオーネ」と比べると、その差異は小規模にとどまっていた。

●1993 ランチア「デルタHFインテグラーレ エヴォルツィオーネII」

クラシック・ランチアの象徴でもあった濃紺「ブル・ランチア」にリペイントされたランチア「デルタHFインテグラーレ エヴォルツィオーネII(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
クラシック・ランチアの象徴でもあった濃紺「ブル・ランチア」にリペイントされたランチア「デルタHFインテグラーレ エヴォルツィオーネII(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 ピロボール式のサスペンションリンクが採用され、ハブ/ホイールを5穴式に変更した足回り。16V以前よりマッチョになったブリスターフェンダーや角度調整式のルーフエンドスポイラーなどは「デルトーネ」こと1992年モデルの「エヴォルツィオーネ」と、事実上同一のものである。

 また、1995cc直列4気筒DOHC16バルブ+ターボチャージャー付きエンジンも、一連のインテグラーレの起源にあたる「HF4WD」から大小のアップデートを受けつつ継承されたものながら、エヴォルツィオーネIIではこの期に及んで燃料噴射システムがシーケンシャル化され、エヴォルツィオーネから5psアップの215psをマークするに至った。

 加えて、アロイホイールもエヴォルツィオーネIと同じ基本デザインながら、15インチから16インチに大径化が施され、アピアランス上の迫力をさらに増していた。

 ところで、エヴォルツィオーネIIの時代には限定モデルが数多く作られ、現在ではそれらのモデルについては希少価値から、1500万円以上のプライスが付けられる事例も珍しくはない。

 しかし今回の「LONDON」オークション出品車両は、シリーズ生産のスタンダード仕様である。エヴォルツィオーネIIとしてはもっとも早い時期にあたる1993年4月28日に製作され、新車時の登録名義は「フィアットS.p.A.」。

 1994年、英国アールズコートで開催され、デルタHFインテグラーレとしては最後のお披露目となった「ロンドン・モーターショー」で展示されるなど、メーカーの公式プロモーション活動のために残された個体だったという。

 その後1995年には、ランチア経営陣と関係の深いトリノの銀行家に譲渡され、その令嬢へのプレゼントとなる。もともとは「ロッソ・モンツァ」だったボディカラーが、クラシック・ランチアの象徴でもあった濃紺「ブル・ランチア」にリペイントされたのも、銀行家の娘に似合う、よりエレガントなカラーと判断されたからだったという。

 そして2013年までは銀行家のファミリーによって維持され、時の所有者のビジネスのためロンドンに居を移した際にも一緒にトリノから持ち込まれたが、登録はイタリア時代のものがそのまま残されている。

 またメカニカルパートについては、現オーナーのもとで完全なオーバーホールが施された一方、内外装にも非常に入念なメンテナンスが施され、約1万6000kmというローマイレージ以上に美しいコンディションを保っている。

 FCAヘリテージ「ランチア・クラシケ」の認証を受けていることを示す証書や、イタリア語版のオリジナルリブレットなど、ドキュメント類も完備したこの個体は、限定バージョンではなくとも、ヒストリー/コンディションともにハイエンド。

 その事実を証明するように、「LONDON」オークションのオンライン競売では8万4700ポンド。すなわち日本円に換算すれば、約1180万円という高値で落札されたのだ。

【画像】ランチア「デルタ」のエヴォ1とエヴォ2を見比べてみる(28枚)

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