およそ1200万円!! ますますプレ値がつくランチア「デルタ・エヴォ」とは?
1990年前後にモータースポーツシーンで活躍したクルマの市場価値が上がっている。そうしたクルマの1台であるランチア「デルタHFインテグラーレ」の最終進化版の2台の違いについて解説する。
ラリーで勝つために進化した「デルタHFインテグラーレ」
ランチア「デルタHFインテグラーレ」といえば、「ヤングタイマー」と呼ばれる1980-90年代のネオ・クラシックカーのなかでも、格別の人気を誇るモデル。
そして、国際マーケットにおける相場価格が近年になって一気に高騰してしまったことでも知られている。
歴代インテグラーレのなかでも、最終進化版である「エヴォルツィオーネ」および「エヴォルツィオーネII」の人気は格別で、2000年代初頭には300−400万円の売り物が普通に流通していたのが、2010年代終盤以降には軒並み1000万円前後のプライスを掲げるようになってきている。
今回はRMサザビーズ社が2020年10−11月に英国とアメリカで相次いでオンライン開催した「LONDON」オークション、および「OPEN ROADS, FALL」オークションに出品されたランチア・デルタHFインテグラーレ「エヴォルツィオーネ」と「エヴォルツィオーネII」の2台を「レビュー」の俎上に載せて、この超人気ヤングタイマーの国際クラシックカー・マーケットにおける現況を探ってみることにしよう。
ランチア・デルタ・インテグラーレは、FIA「グループA」規約で闘われることになった世界ラリー選手権(WRC)制覇を目指して、ランチアと旧アバルト技術陣が開発したスーパーウェポンである。
コンパクトハッチバック車であるデルタの車体に、2リッターの直列4気筒DOHCターボエンジンとフルタイム4WDシステムを押し込んだモンスター的モデルは、当初「デルタHF4WD」として1987年に正式発売および実戦投入され、このシーズンを制覇する。
また翌1988年にはエンジンをさらにチューンするとともに、ブリスターフェンダーを与えた「インテグラーレ」に進化。翌1989年にはエンジンを気筒当たり4バルブ化した「インテグラーレ16V」と、ラリーの実戦における戦闘力アップを図るために次々と進化を繰り返し、1990年シーズンまでは圧倒的な戦果を見せつけた。
ところが、ワークスチームの「ランチア・スクアドラ・コルセ」としてのエントリー最後の年となった1991年シーズンは、4年連続となるシリーズタイトルこそ獲得したものの、トヨタのワークスチーム「TTE」のセリカ「GT-Four」に代表される日本のライバルたちを向こうに回しての苦戦を強いられてしまう。
そこで、ランチアがセミワークスの「ジョリー・クラブ」を擁して闘うことになった1992年シーズンに向けて、事実上のフルチェンジというに相応しい大規模なモディファイ作業を施した「エヴォルツィオーネ(エボリューション)」を生産することになった。
ここでも開発を担当したのは、アバルト技術陣である。パワーユニットは排気系やターボチャージャーの見直しで10psアップの210psとなった。サスペンションはアームの取り付け位置から変えられてストロークの大幅アップを図った。
またボディについても、前後ブリスターフェンダーの大幅な拡大にエアインテークが盛大に開けられたバンパー、リアの大型スポイラーを装着するなど、より実戦的なものとされた。
アバルト内部では「SE050」の開発ナンバー、ないしは「デルトーネ(Deltone:大きなデルタ)」と呼ばれたデルタHFインテグラーレ。メーカー側の正式な車名としては「16V」の名称が消えたものの、一般的には「エヴォルツィオーネ」の名で呼ばれることになった最終型デルタは、見事1992年のコンストラクターズ(製造者部門)タイトルを獲得し、WRCの6シーズンに有終の美を飾った。
また市販車としても、少々下火になりかけていたデルタ・インテグラーレ人気を再燃させる、ヒット作となったことを記憶している人も多いことだろう。
●1992 ランチア「デルタHFインテグラーレ エヴォルツィオーネ」
今回、RMサザビーズ「OPEN ROADS, FALL」オークションに出品されたのは、1993年生産とされるエヴォルツィオーネ。走行距離計は約1万6000kmを指しており、「ロッソ・モンツァ」のボディや、有償オプションだった黒革張りレカロ製インテリアなどは、走行距離数を証明するかのように、あたかも新車のようなコンディションを誇っている。
また、初期モデルの特徴であるレアなインタークーラー用ウォータースプレーバッグや、メーカーオプションのスライディング・ルーフ、エアコンディショナーなど、いわゆるフル装備の1台である。
さらに、車載マニュアルや登録に関するドキュメント、ASI認定ドキュメントにふたつのキーセットも添付されるなど、ほぼパーフェクトな1台だった。
しかし、実際の競売ではビッドが思うように進まなかったようで、残念ながら「No Sale(流札)」。現在ではRMサザビーズ北米本社の営業部門で、7万−8万ドル(邦貨換算約730万円−830万円)のエスティメート(推定落札価格)が設定されたまま、継続販売となっているようだ。
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