自動車業界に衝撃! 東京都が純ガソリン車禁止を前倒し!? 小池発言の真相とは
クルマの電動化実現には社会システムの見直しが不可欠
それにしても、政府も東京都も、なぜこれほどまでにZEV化へ一気に舵を切ったのでしょうか。
もっとも大きな要因は、ESG投資でしょう。

経済産業省はESG投資について、「従来の財務情報だけではなく、環境(エンバイロンメント)・社会(ソーシャル)・ガバナンス要素も考慮した投資」と定義。
持続可能な開発目標(SDGs)とともに、企業経営を評価する概念として世界的に注目が集まっています。
投資マネーが動くなかで、カリフォルニア州や中国政府、欧州委員会などが進めてきたCO2総量規制やZEV数量規制の厳格化が進んでいます。
こうした投資誘導型ともいえる、昨今の急速な電動化シフトに対して、自動車メーカー幹部らと意見交換していると「想定以上」という言葉をよく聞きます。
たとえば、先日のスズキ新型「ソリオ」のオンライン記者発表の際、鈴木俊宏社長は筆者(桃田健史)の同社の電動化戦略に関する質問に対して「マイルドハイブリッド、プラグインハイブリッド、EVへとステップを踏むべきだが、昨今のEV化(の潮流)については、スピードが加速気味かと思う」と、ESG投資を念頭に置いた発言をしています。
そのほか、ESG投資やSDGsの文脈で、いわゆるスマートシティ構想に関する議論が再燃しており、そのなかで活用されるモビリティのZEV化が強調される面があります。
いずれにしても、本来のクルマの電動化は、充電ステーションや水素ステーションのインフラ整備や、ウェル・トゥ・ホイール(原料の掘削からクルマの駆動まで)という概念、また電池のリサイクルやリユースなど社会システム全体を大きく見直すことが必要不可欠です。
さらには、人々の環境に対する意識を大きく変え、コロナ禍となり注目されている、ひとりひとりの行動変容をも伴うべきだと考えます。
それが、足下でのクルマの電動化の議論を見ていると、ガソリン車からZEVへの単なるコンバージョン(買い替え)として、大量生産および大量消費を前提としている印象があります。
アメリカや中国に負けるな、といった日本の産業力強化やESG投資に対する過度な対応ではなく、地にしっかり足をつけた“人中心”の議論が進むことを願います。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。







































