レクサス新型「IS」はマイチェンなのに走りが激変! 大進化を可能にした2つの“武器”とは

2020年11月5日にマイナーチェンジして発売されたレクサス新型「IS」は、エンジンやプラットフォームを変更していないのに、大幅なレベルアップを果たしました。それを実現するのに2つの武器があったというのですが、それは一体何なのでしょうか。

フルモデルチェンジ並みに進化したレクサス新型「IS」

 2020年11月5日に発売されたレクサス「IS」ですが、レクサス自身はマイナーチェンジといっているものの、その内容は下手なフルモデルチェンジ以上です。

 チーフエンジニアの小林直樹氏は、「パワートレインとプラットフォームを変更していないので、フルモデルチェンジとは呼べません」といいます。

レクサス新型「IS」
レクサス新型「IS」

 筆者(山本シンヤ)は発売に先駆けクローズドコースで試乗しましたが、走りに関しては「激変レベル」であり、TNGA採用モデルと比べてもそん色ない仕上がりだと感じました。

 それは、既存のプラットフォームでも大幅なレベルアップを可能した“何か”があったからでしょう。その秘密はどこにあるのでしょうか。

 もともと、FR系のTNGAプラットフォームは「大」と「小」の二本立てで計画されていたといいますが、ISが使おうとしていた「小」は投資に対する採算から開発を断念。

「大」を使うという案もあったそうですが、コンパクトが絶対条件のISで使うには大改修が必要ということで、既存のプラットフォームを用いてTNGAレベルに引き上げる道を選んだといいます。

 新型ISのプラットフォームは、厳密にいうと従来モデルのそれとは異なります。従来は「Nナロー」でしたが、新型は「GS」などが使うトレッド/全幅が広い「Nワイド」を採用しました。

 もちろん、部分的な着力点剛性やブッシュ周り、構造用接着剤、ボディの固有振動数の調整などがおこなわれていますが、新型ISには大きな効果を生む“武器”がレクサスとして初導入されています。

 その武器とは「ホイール締結のハブボルト化」です。

 欧州車は古くからハブボルトを採用していますが、その理由は「締結剛性」のためです。

 従来のスタッドボルト+ハブナットは、接合ポイントがスタッドボルトとナットのねじ山の2か所に対して、ハブボルトは車体との結合ポイントはボルトのねじ穴部分だけです。接合部分が少ないほうが取り付け剛性は上がるというわけです。

 ハブボルト化による締結剛性向上により、ボディを無理に固めずに「力の連続性」や「車体をひとつの塊として車体全体で受け止める構造」を実現しやすいうえに、ステアリング切り出しのスッキリ感、リニアな応答性、サスペンションのスムーズな動きなど、走りに大きな影響を与えているそうです。

 ただ、そんなに効果があると知りながら、なぜこれまで採用しなかったのでしょうか。

 それは「作りづらい」という製造上の問題、そして「既存のホイールが使えない」という販売側の問題が大きかったとされています。

 しかし、開発陣はTNGAレベルに引き上げるためには「やり切る必要がある」と採用を決断。もちろん工場側の協力なしではできないので、実際に乗ってもらって、「こんなに変わるならやらなければダメだよね」と理解してもらったそうです。

 新型サスペンションのセットアップも違います。

 筆者は新型ISに乗り「綺麗に動くのに一体感がある」と感じましたが、その印象を開発チームに伝えると「従来モデルは車体側のネガを適合やチューニングで対応していましたが、新型はハブボルト採用で解消。そのため、狙った性能を出しやすくなったのも事実です。従来はサスをストロークさせると悪い部分が出るのでなるべく動かさないようにしていましたが、新型はストロークさせてもリニア感が保てるため、そのようなセットアップ実現できました」と教えてくれました。

 ちなみに従来モデルの3.5リッターV型6気筒エンジンを搭載する「Fスポーツ」には、「LDH(=VGRS(可変ギアレシオステアリング)、EPS(電動パワーステアリング)、DRS(ダイナミックリアステアリング)を統合制御)」が採用されていましたが、新型には採用されていません。

 その理由はコストダウンではなく、制御を使わなくても同じ性能が出せるようになったということ。つまり、ここも基本性能の底上げを意味しています。

 ハブボルトの採用で開発における「天使のサイクル」が回り始めたといってもいいかもしれません。

 ただ、ひとつだけ気になったのは曖昧でルーズなステア系です。ここが最新モデルのようにスッキリしたフィールや直結感が出るといいのですが、「ISで使われる神経系(=ハーネス)が古いので、新しいハードと組み合わせるのが難しい」とのことでした。

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