レクサス新型「IS」はマイチェンなのに走りが激変! 大進化を可能にした2つの“武器”とは
ニュルを再現した新設テストコースが新型ISの進化に貢献
新型ISは「下山テストコースで鍛えた」という部分も注目すべき部分でしょう。恐らく新型ISは、トヨタ/レクサス含めて初めてそれを謳ったモデルとなります。
下山テストコースは2019年4月に愛知県豊田市下山地区に新設された車両開発用のテストコースです。
まだすべて完成していませんが、現在稼働中の第3周回路(カントリー路)はドイツのニュルブルクリンクの入力を再現したコースレイアウトで、自然の地形を活かした約75mの高低差、多数のコーナー、さまざまな路面に組み合わせた約5.3kmのコースとなっています。
新型ISの開発でこのコースを使うと決断したのは、「下山を使えばより厳しいストレスのなかでクルマをチェックできる」というのが理由です。
筆者も実際に走らせてもらったことがありますが、ニュルと同じようにクルマだけでなくドライバーにもストレスを与えるコースであることを実感させられました。
このコースはニュルでの走行データから前後/左右/上下のGレンジを測り、それをほぼ模擬できるようにシミュレーション。
さらに、ニュルを走るチームのフィードバックもおこなうことで、ニュルでないとわからないことも、効率よく再現できるレイアウトになっています。
その特徴は前後/左右/上下の「複合入力」と「切り替えしの多さ」、そして「アップダウン」が激しいことです。
いままではそのような確認は、ニュルへ行くか既存のテストコース(静岡県・東富士/北海道・士別)で評価ドライバーが短い路面状況の現象を引き伸ばして見ていたそうです。
しかし、ニュルへ行くのは年に数回のため色々なトライができず、既存のテストコースでは評価ドライバーとエンジニアが現象を共有しにくいといった悩みがあったのも事実です。
しかし、下山テストコースができたことで、「いつでもテストが可能&細かい作り込みもできる」、「現象が一発でわかる」、「ごまかしが効かない」、「操安性だけでなく商品性も確認可能」、「評価項目に合わせて自在性を持つ」など、クルマを鍛えるうえで多くのメリットを生んでいます。
リアルワールドも「もっといいクルマづくり」には欠かせない厳しい道ですが、新型ISはマイナーチェンジのメリットを活かし、「見た目は従来モデル、中身は新型」というテストカーで一般公道を走れたことも大きかったそうです。
このように新型ISを見ていくと、全面刷新をしなかったことで従来ではできなかった重箱の隅を突くような作り込みができたと思っています。
つまり、今回の大幅改良は飛び道具ではなく全体のバランス(総合力)で実現しており、その結果が「1+1=3」のような進化に繋がっているのでしょう。
改めて、クルマの開発は愚直にやること、基本に立ち返ることが「もっといいクルマづくり」への近道だということを再認識しました。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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