祝50周年! ランボルギーニの悲運のスーパーカー「ウラッコ」とは?

どうして「ウラッコ」の販売は低迷したのか?

 ウラッコにかけるスタンツァーニの理想主義は、パワーユニットについてもいかんなく発揮されることになる。

●意識の高さゆえに強いられた苦戦

「ウラッコ」は、開発の遅れから時期を逸した「遅れてきた量産スポーツカー」となってしまった
「ウラッコ」は、開発の遅れから時期を逸した「遅れてきた量産スポーツカー」となってしまった

 創業当初からジョット・ビッザリーニ技師の設計によるV12エンジン一本の体制だったランボルギーニにおいて、第2のエンジンとなったV型8気筒は、パッケージングに重点を置いた車体設計に呼応して、コンパクト・軽量であることを最重要視して企画・開発された。

 まずは、ボア×ストロークを86mm×53mmという恐るべき超オーバースクウェアとすることでシリンダーブロックの天地を低めた。

 またスペースを要するバンクあたりDOHCではなくSOHCにするとともに、ヘッド側の燃焼室壁面を可能な限り平らにする一方で、ピストン側に皿状のくぼみを設けて形成されるヘロン式燃焼室を採用することによって、シリンダーヘッドの小型化も図っていた。

 その結果として誕生したのは、2463ccの排気量から最高出力220ps/7800rpm、最大トルク230Nm/5750rpmという、当時としては充分に高性能なエンジン。これが、ウラッコP250に搭載されることになった。

 かくして、ウラッコの生産型プロトティーポ(試作車)は1970年のトリノ・ショーにおいてショーデビューを果たすに至った。

 しかし、その後の走行テストにおいて問題が続々発生したこと、また量産には精度を要求されるモノコックボディを採用したこと、スタンツァーニの技術至上主義が目指した生産体制の構築が必要であったことなど、斬新な試みを一気呵成に遂行しようとしたがゆえに生産化に手まどり、ようやく正式なデリバリーに至ったころには、既に1973年を迎えてしまっていた。

 そして、このデビュー時期の遅延こそが、ウラッコの運命を暗転させてしまう。

 この時期になると、ランボルギーニ社はフェルッチオの本業であるトラクター部門が、南米ボリビアで勃発したクーデターの余波を受けて苦境に立たされ、その影響が自動車部門にも暗い影を落とし始めていた。

 また、この年の10月に勃発した第4次中東戦争を機に「オイルショック」が世界を襲った結果、大排気量スポーツカーのマーケットが大幅に冷え込むという事態も発生していた。

 そのうえ、ウラッコ自身も最高速度にして245km/hに達するハイパフォーマンスを標榜したものの、SOHCヘッドはスペックを重視する市場では、1973年にデビューした「ディーノ308GT4」の3リッター・4カムシャフトに対して、商品力の不足が指摘されてゆくのだ。

 これらの悪条件が重なった結果、ウラッコのファーストモデルであるP250は、小改良版の「P250S」を合わせても、1976年までの生産台数は520台に終わってしまった。

 この窮状を打開すべく、イタリア国内需要の掘り起こしを期したランボルギーニは、V8エンジンのボアを77.4mmに縮小。P250と同じ53mmのストロークで排気量1994ccとすることで、かつての日本と同様に2リッター以下の自動車税が安価に抑えられていたイタリア市場専用モデル「ウラッコP200」を1974年からラインナップに加える。

 P200は最高出力182ps/7500rpm、最大トルク176Nm/3800rpmを発生し、最高速度は215km/hに達したが、1977年までの3年間で作られた台数はわずか66台。こちらも成功作とはほど遠かった。

 さらに1975年には排気量を2996ccに拡大するとともに、ヘッドをバンクあたりDOHC化した「P300」も追加設定。最高出力265ps/7500rpm、最大トルク275Nm/5750rpm、そして最高速度はついに250km/hの大台に乗せながらも、1979年ごろに生産を終えるまで、サンタ・アガタボロネーゼ本社工場からラインオフしたのは190台のみに終わってしまう。

 つまりすべてのウラッコを合算しても、総生産台数は776台。宿敵フェラーリに「ディーノ308GT4/208GT4」などのフォロワーを生み出させたにもかかわらず、ウラッコ自身は少なくとも商業面では栄光を掴むに至らなかったのだ。

 しかし誕生から半世紀を経た今になって、もう一度ウラッコの評価が高まっているのは、歴史の皮肉といわねばなるまい。

 ウラッコが起源となった「ピッコロ・ランボ」の系譜は、今世紀の「ガヤルド」や「ウラカン」に継承されたと見るのが順当だろう。

 でも、スタンツァーニ技師が目指した実用性や生産効率への探求心は、むしろ現在の「ウルス」にも通ずるもの……。筆者には、そう感じられてしまうのである。

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