格安EV発表のテスラに追い風か? カリフォルニア州のガソリン新車販売禁止の真相とは
ガソリン車販売禁止は事実上のZEV法の強化か?
テスラの新戦略発表とタイミングを合わせるかのように、カリフォルニア州のニューサム知事が「2035年を目途に州内でのインターナル・コンバッション・エンジン(ICE)の新車販売を禁止する」と発表しました。
インターナル・コンバッション・エンジン(ICE)とは、日本語で内燃機関を指します。
近年、自動車業界では、このICEという表現が使われる機会が増えてきたのですが、背景にあるのはパワートレインの電動化です。
一般的には、内燃機関とモーターを融合するハイブリッド車やプラグインハイブリッド車をICEに含めないという解釈をしています。
そのため、今回のカリフォルニア州の発表でも、すべてをEV(電気自動車)、またはFCV(燃料電池車)にするという意味ではないと思われます。
ICEの販売禁止については、フランスや英国など欧州主要国でも同類の政策を発表していますが、多くの場合は、現状では将来に向けた達成目標という解釈でとどまっています。
一方、カリフォルニア州は世界に先んじて、環境負荷の低い電動車の量的規制を始めたことが知られています。1990年から施行されているゼロエミッションヴィークル(ZEV)規制です。
今回の発表についても、ZEV規制の策定をおこなう、カリフォルニア州環境局・大気保全委員会(CARB)の関係者も同席していることから、事実上のZEV法の強化という見方ができます。
ところが、話はけっこう複雑で、カリフォルニア州と連邦政府との関係が大きく影響しており、今回の発表内容がそのまま施行されるかどうかは現時点では不透明だといわざるを得ません。
端的にいうと、トランプ政権は、オバマ政権まで容認されてきたカリフォルニア州と連邦政府それぞれの環境規制が併存する「ダブルスタンダード」を解消し、連邦政府が主導する規制の一本化を打ち出しています。
その考えに反対するカリフォルニア州では、自動車メーカー数社と連携した、独自の燃費規制(CO2規制)の策定を始めると発表するなど、州と国との間で意見の食い違いがあるのが実情です。
この状況は、11月の大統領選挙の結果次第で、大きく変わる可能性も否定できません。
そのため、テスラが打ち出した2万5000ドルモデルを含む新戦略は、あくまでも1企業の将来構想であり、州や連邦政府を巻き込んだ政治的動きと直結させて考えることは、時期尚早だと感じます。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
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