スバル史上最強! STIが手掛けた「S209」がスゴすぎる! 乗り味はいかに?

歴代WRXシリーズでナンバー1の乗りやすさ

 日本では販売されないものの、S209の実力はどうなのかというところは、スバルファンであれば気になるでしょう。それは歴代Sシリーズ全てのモデルを試乗してきた筆者(山本シンヤ)も同じです。

 2019年のデトロイトショーで世界初公開されて以降、リクエストをしていたのですが、特別に日本での試乗が叶いました。

北米初のSシリーズとして限定販売された「S209」
北米初のSシリーズとして限定販売された「S209」

 試乗コースは日本のニュルと呼ばれる“グンサイ”こと群馬サイクルスポーツセンターです。最強のSシリーズをチェックするには申し分ないステージでしょう。

 じつはS209の開発コンセプトのひとつに「北米のサーキット(バージニア・インターナショナル・レースウェイ)のセダン最速タイムを目指す」ということが設定されていました。

 事前にその話を聞いていたので、「サーキットスペシャルをグンサイで走らせて大丈夫なの?」と不安でしたが、その不安は走り始めてひとつ目のコーナーを曲がったらすべて吹き飛びました。

 カチッとしているのに突っ張った印象がない車体や、ダイレクトで操舵レスポンスは高いのに薄皮一枚挟まっているかのような心地よいダルさを持つステアリング系。

 サーキットスペックでバネもダンパーもタイヤも数値的には相当ハードなセットながら振動や入力を上手に吸収してくれるサスペンションと、すべての部分において「硬さ」と「しなやかさ」が共存しているのです。

 その結果、絶対スピンしないと確信を持てるリアの安定性と、アンダー知らずでグイグイと曲がるハンドリングを両立しているのはもちろん、クルマとドライバーの信頼関係や対話性、そして扱いやすさ、乗りやすさは、歴代WRXシリーズナンバー1だと感じました。

 個人的には武闘派なS207/S208ではなく、強さのなかに優しさを持つ「S206」を継承している乗り味に感じました。

 グンサイは道幅が狭くてエスケープゾーンもほとんどなく、路面状況も悪いため、一般道以上に緊張感が高いのですが、そんな環境下で高いスピードながらも冷静にドライビングできたのは、クルマを信頼してポテンシャルを引き出せるシャシ性能のおかげです。

 その一方で、硬い柔らかいでいえばS209は硬めですが、「ノーマルより快適なのでは?」と感じるほどの快適性の高さもポイント。プレミアムブランドに片足を突っ込んだかのような動的質感まで備わっています。

 この辺りは、開発責任者の高津益夫氏が常日頃語る「走りを極めると快適になる」を実感しました。

 ハンドリングに関してはほぼ完ぺきといえる仕上がりですが、ひとつ気になったのはシートです。

 純正レカロのホールド性では体が支えきれないコーナリングレベルに来ており、安定したドライビング環境のために良いシートが欲しいです。

 個人的には車両のこだわりを考えると、レカロシートの最高陣でカーボンバックシェル採用の「SP-X」を奢ってあげてもいいかなと思いました。

 エンジンは低速域のトルクに2.5リッターの余裕を感じるものの、「ザ・ターボ」というようなメリハリのある盛り上がりの特性とレッドゾーンの6500rpmを軽々と超えていきそうな伸びの良さ、そして「GC8」時代のEJ20のようにシュンシュン回る気持ち良さが備わっており、EJ20とは異なるもうひとつの「究極のEJ」だと感じました。

 もちろん最新のターボと比べると決して万能な性格ではないですが、エンジンの爆発で生まれる鼓動や人間味を感じるフィーリングなど、ただ速く、鋭いだけでなく“血が通っている”ユニットなのは、EJ20と共通です

 筆者は以前ニュル24時間を戦うレーシングカー(2016モデル)に試乗した事がありますが、S209はもっともニュル車に近い量産車だと感じました。

 つまり、STIが常日頃から提唱する「強靭でしなやかな走り」のひとつの理想形です。現在スバルでは次期「WRX」の開発が進められていますが、最低でもS209を超える必要はあるでしょう。

※ ※ ※

 このS209は、並行輸入業者の手により日本に上陸していますが、価格はかなり高価で、誰でも買えるとはいかないのも事実です。

 しかしSTIは、「リアドロを含めたフレキシブル補剛パーツのフル装着で、S209の乗り味に近づきます」といっています。

 日本でS209を味わいたいというVA系WRX STIオーナーの方は、これらのパーツを装着することをオススメします。

スバル・WRX S4 のカタログ情報を見る

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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