異形のフェラーリ!! ザガートが手掛けると価格も跳ねる!
イタリアの名門フェラーリを、伝統あるカロッツェリア「ザガート」が手を加えると、果たして価値は上がるのだろうか。最新オークションに出品された2台のザガート製フェラーリのビットから考察してみよう。
フェラーリに有名カロッツェリアが手を加えると価値はでるのか?
毎年8月中旬に、北米カリフォルニア州のモントレー半島一帯を舞台として「モントレー・カーウィーク」と呼ばれるイベント群が、1週間にわたって開催される。
この時期、「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」や、ラグナ・セカ・サーキットを舞台とする「ロレックス・モータースポーツ・リユニオン」などの超人気イベントに参加するために、全世界から自動車エンスージアストたちが集結する。
そしてこの1週間には、アメリカ国内のみならずヨーロッパのオークションハウスたちも、大規模なオークションを連日のように開催することになっている。なかでもRMサザビーズ社がモントレー市の中心街で開催する巨大オークションでは、毎年コンクール級のクラシックカーに対して熱烈なビット合戦が展開されるのだが、2020年は新型コロナ禍によって「モントレー・カーウィーク」自体がキャンセルされてしまった。
そこでRMサザビーズ社は、今年のクラシックカー業界における最新トレンドとなった、ネット上のオンライン限定オークション「SHIFT MONTEREY」を開催。台数・クオリティともに、これまでの対面型オークションにも負けない出品車両を数多く集めた。
そのなかでもVAGUEが注目したのは、数ある自動車ブランドでも、常にオークションの動静を測るバロメーターとなるフェラーリである。しかも、特別にレアなザガート製ボディを持つ、近現代の超少数製作モデルが2台も出品されていたことだった。
今回は、その2台ザガート製フェラーリのオークション結果を、「レビュー」としてお伝えしよう。
●1990 フェラーリ348tb ザガート・エラボラツィオーネ
フェラーリ「348tb ザガート・エラボラツィオーネ」は、アルファ ロメオES30系「SZ」の成功で息を吹き返しつつあったカロッツェリア・ザガートが、さらなる復活を期して企画、1990年から10台限定で製作されたといわれているスペシャルモデルだった。
「Elaborazione」とは「処理」ないしは「推敲」を意味するイタリア語。その名が示すとおり、既存モデルにザガート流のモディファイを加えたコスメティックチューン車で、当時まだデビューから間もない最新モデル「フェラーリ348tb」をベース車に選んでいた。
1991年の東京モーターショーにおいて、イエローの第1号車が初めて公衆の面前でお披露目される。会場での評価は、なかなか良好だった。
ところが、この時のザガート社ブースは、筆者の古巣であるコーンズ&カンパニー・リミテッドが設営したフェラーリ社ブースと目と鼻の先。オリジナルの「348tb/348ts」の間近に、そのカスタマイズ車両が展示されたことに、モーターショーのために来日していた当時のフェラーリ首脳陣が不快感をあらわにしていたことを、今でも鮮明に記憶している。
今回「SHIFT MONTEREY」に出品されたのは、オークションWEBカタログによると、最後に生産された1台とのことである。もっとも有名な第1号車と比べると、エアダムスカートを組み込んだフロントバンパーの意匠がまったく異なっている。
フェラーリの伝統である楕円形ラジエーターグリルを模したモールドが設けられた初期のモデルと比べると、元来348がフロントにラジエーターを持たないことを強調するかのように、大幅にシンプルなデザインとされている。
RMサザビーズ社が設定したエスティメート(推定落札価格)は、現況のスタンダードの348tbと比較すると、ほぼ3倍にも相当する22万5000ドル−27万5000ドル(邦貨換算約2400万円−2900万円)という強気なものだったが、希少性や「ザガート製フェラーリ」というストーリー性が加味されることを考慮すれば、妥当と判断されたと推測される。
はたして2020年8月15日午後(現地時刻)に締め切りとなった競売では、20万5000ドル(邦貨換算約2160万円)まで入札されたのだが、最低落札価格には届くことなく、あえなく流札。「Still For Sale(継続販売)」という残念な結果に終わった。
さる2019年5月、「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」に際して同じRMサザビーズ社がおこなったオークションでは、もっともアイコニックな第1号「エラボラツィオーネ」が21万8500ユーロ(邦貨換算約2300万円)で落札されたという実績からすると、今回の個体への評価が低かったことには、新型コロナ禍による国際マーケットの冷え込みなどを指摘する声もあることだろう。
でもこれはあくまで筆者の私見ながら、イエローの1号車と比べてしまうと、今回の出品車両のルックス面の魅力が低いことが、高価落札とならなかった最大の要因と感じられてしまってならないのだ。
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